このところ、テレビや新聞では、企業の業績や雇用情勢の悪化など、暗いニュースばかりを伝えており、年の瀬の日本には、不況風が吹き荒れています。
確かに、金融機関の経営が悪化すれば、経済の「血液」ともいえるキャッシュの流れが滞り、それが実態経済にも悪影響を及ぼすのは間違いありません。しかし、一方で、人々の不安心理を必要以上に煽るような、昨今の報道のあり方には、正直、違和感も覚えます。
半年前のことを思い出してみて下さい。原油が高騰し、それこそ日本人は海外旅行にも行けないし、車にも乗れない、といった報道ばかりが行われていました。月末になると、値上げ前に、給油をしようとスタンドに列をなす車の映像が、お決まりのように流れていましたね。
しかし、夏頃に1バレル=140ドルを超えていた原油価格は、いまや、40ドル近辺まで急落しています。加えて円高の恩恵もあり、家の近くのガソリンスタンドでは、ついにレギュラーガソリンが1リットル=100円まで下がりました。
ところが、海外旅行やドライブのチャンスが到来した、といったニュースを目にすることはありません。
それどころか、ある朝のニュースでは、家電量販店に来店していた外国人観光客に「こんな円高では何も買えない。」と言わせて、円高不況が消費にも悪影響をもたらしている、と結んでいました。
ここまでくると、不況感を煽りたいがために、都合のよいコメントだけをつなぎあわせた「情報操作」を行っている、といっても過言ではないと思うのですが、驚くのは、こうした報道が、興味本位のワイドショーだけではなく、朝のNHKのニュースでも、堂々と行われているということです。
しかし、原油価格や円が高くなって得をする人もいれば、下がると恩恵を受ける人もいる訳で、全ての人が、一様に不況にあえぐ、というシチュエーションの方が、不自然だということは、ちょっと冷静に考えればわかるはずです。
実際、先日、韓国から来日した友人と食事をしましたが、いま、韓国と日本を結ぶ飛行機は、円高・ウォン安の恩恵を受けて、韓国旅行に出かける日本人観光客で大変な混雑だそうです。しかし、こうしたニュースは、不況感を煽るには「都合が悪い」という理由で、テレビや新聞ではほとんど取り上げられることはありません。
おそらく、視聴率を上げるためには、不況感を煽った方が好都合、という判断も働いているのでしょうが、広告収入に依存するメディアにとって、これは自殺行為といっても過言ではないでしょう。実際、電通の売上は、前年比で15%近く減少しており、不況報道によって不安心理を煽られれば、さらに多くの企業が広告費を削ろうとするでしょう。
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