スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由?

2008.12.18

営業・マーケティング

スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

スターバックスの大ファンであるが故に、何度もその問題点を指摘してきた筆者であるが、ある記事で問題の本質に触れることができた気がする。 その記事の要点を元に、再度、ここで警鐘を鳴らしたい。

スターバックスが初のアジア圏進出を果たしたのは1996年のこと。日本第一号店は銀座松屋の裏の小さな2階建て店舗だった。エスプレッソを主体とした「シアトルスタイル」と呼ばれるカフェの新規性がウケ、多くの客がつめかけた。筆者もその一人である。
以後、破竹の勢いで出店攻勢が続き、新たなカフェの形態の先駆けとして隆盛を誇ったのである。

スターバックスの成功のヒミツは何であろうか。
それは、今まで満たされていなかった顧客ニーズを見事につかみ取ったことだ。
96年当時は、旧来の「喫茶店」は衰退し、ドトールやベローチェに代表される新興の「低価格カフェ」が伸長していた時期だった。
マーケティングの4P的にいえば、提供される製品は旧来の喫茶店はサイホンで淹れたり、様々な工夫をしていたが、低価格カフェは機械で淹れる簡便なものだ。コーヒーのラインナップとしては、双方とも「ブレンド」か「アメリカン」ぐらいのバリエーションである。
価格は旧来の喫茶店が500~700円。低価格カフェは150円~180円。
それに対して、新たに日本に上陸したスターバックスは、エスプレッソマシンで淹れるコーヒーに、様々なフレーバーやトッピングを施し、最初のうちは客がうまくメニューを選べないほどのバリエーションを展開して見せた。その魅力的な商品を、「本日のコーヒー」であれば280円。トッピングやバリエーションを指定してもだいたい500円弱という中間価格帯で提供したのだ。

では、スターバックスの価値、言い換えれば「らしさ」はコーヒーのバリエーションと価格だけの魅力なのであろうか。いや、そうではない。
スターバックスという「商品」を構成する魅力は、ぞのコーヒーを淹れる従業員も要素の一つだ。「バリスタ」という社内資格を取得しなければコーヒーを入れることは許されない。創業の理念を共有し、技を磨き、明るく顧客対応をする。これは世界共通の同社の魅力であり、「らしさ」の中核をなすものであろう。

魅力的な人材が活躍するには、最高の舞台も重要だ。店舗。客の側から見ればむしろこちらがコーヒーという商品と同等以上に重要な要素かもしれない。旧来の喫茶店の、どこか垢抜けない店舗とも、低価格カフェにおけるカウンターのスツールに腰掛けると、両隣の客と肘が触れてしまうような狭さとも異なるゆとりの空間。
ゆったりとした椅子やソファー、テーブル間の距離も十分取ってある。さらに照明や店内音楽、壁に掛けてある絵画にまでオシャレさに気を遣って、「店内空間も付随期機能としての商品価値の一部である」と十分認識された設計であった。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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