保険と類似商品を取扱う共済事業が揺れている。「共済」とは、簡単に言えば特定の組合員を対象とした生損保事業と言えるが、その加入者数は9000万人に近いと言われ、保険会社にはないユニークな商品、保険会社と比較して圧倒的に安い掛金(保険会社でいう保険料)と、高い割戻金(保険会社でいう配当金)などをアピールし、保険会社が業績に伸び悩む中、継続的に成長を遂げてきた。
共済事業者の筆頭格であるJA共済などは、総資産規模において生保業界最大手の日本生命にも匹敵し、法人申告所得ランキングでは、数々の一流大企業を抑え、毎年ベストテンに顔を出すなど、実はとてつもない存在なのである。
共済事業者を大別すると、JA共済や全労災など法律に基づいて事業を行う認可共済と、根拠法令、監督官庁などが全くない「野放し」状態の無認可共済に分けられる。認可共済は非営利を基本線に事業を行うものであるが、無認可共済については、ここ数年営利目的の団体設立が相次いだ。急成長した無認可共済の中には、下位の保険会社を凌ぐ収益を上げる団体も出現したのである。
無認可共済な急激な成長とともに急増したのが、加入者とのトラブル・苦情である。何しろ金融庁からガチガチに規制されている保険会社と違い、一切の規制がないのである。悪質な共済団体から何らかの被害を被ったとしても、加入者はなす術がないのである。
そのような状況において、ついに昨年4月に保険業法が改正され、無認可共済は2008年の3月末までに保険会社もしくは少額短期保険業者(ミニ保険会社)への移行が義務付けられ、保険会社並みの厳しい規制をクリアすることが必要となった。
さて、では無認可共済はすんなり保険会社もしくはミニ保険会社へ移行するのだろうか? これが今非常に厳しい状況なのだ。6月12日付けの日本経済新聞によれば、金融庁に届け出を出した400近い無認可共済のうち、既に4割は白旗を振り、現時点で廃業を決めている。また、4分の1は態度を保留しており、営業継続を表明している3分の1の業者についても、かつて経験のない規制の厳しさをクリアできず、当局から事業開始のOKが出た業者は、昨年4月の業法改正から現在まで2社のみである。
筆者もコンサルタントとして、いくつかのミニ保険会社設立に関わったり、知人から相談を受けたりしたのだが、行き着くところ、規制をクリアするための体制・仕組みづくりにコストと時間がかかりすぎ、収益性の面でビジネスとしての成立が困難ということが一因のようである。また、今まで規制の枠外で事業を行ってきた無認可共済には、基本的にノウハウ不足は否めない。そのため、一般的に給与水準の高い保険会社出身者を採用したため人件費が膨らんだり、既存の保険会社からサポートを受ける見返りとして、高い水準の対価を求められたりなど、事業基盤を構築する以前に、ノウハウ取得に対するコストも大きな負担となるのである。
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2009.10.27
2008.09.26
片出 剛
有限会社 アクト・パートナーズ 取締役
はじめまして。 有限会社アクト・パートナーズの片出と申します。 私はこれまで保険会社を中心とした金融関係の仕事をして参りました。それらの経験等を通じて得た様々な情報を、楽しく分かりやすく発信できればと考えております。 よろしくお願いします。