「手抜き調査」の自覚

2007.06.21

営業・マーケティング

「手抜き調査」の自覚

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

マーケティングリサーチャーの一人として、 自戒を込めて、やや極論を申し上げます。 「アンケート調査は、手抜きの調査方法です。」 こうした自覚が、マーケターには必要だと思います。 アンケート調査自体を否定しているわけではありません。

仮説を検証し、定量的な数字で物事を判断する場合に、
きわめて有効な手法です。

ただし、アンケート調査が、

「今回の調査目的を達成するために、最適の手法か?」

という吟味が十分になされた上で実施が決定されるべきでしょう。

なぜ、こんなことを書いているかというと、
アンケート調査を行う理由が、その「合目的性」ではなく、

・予算がないから
・時間がないから
・他の調査は手間がかかるし面倒だから
 (あからさまにそう思ってはいないでしょうけど)

といった、率直に言ってしまえば、

マーケターの「手抜き」

的なものになりがちだからです。

最近はお手軽・安価なネットアンケートが普及したので、
猫も杓子もアンケート、アンケート。

安易にアンケートを実施して、
結局のところ、あまり役に立たないデータが量産されている
可能性があるんじゃないでしょうか?

「調査なんて役に立たない」

などと、調査の本質を理解しない発言をする人がいるのも、
アンケート調査の氾濫が背景にあるのかもしれません。

消費者対象の調査について言えば、
それは、消費者の心理や行動を的確に把握するもの。

そこから、売れる商品開発や、
効果的なコミュニケーション施策のためのヒント
(顧客洞察=インサイト)を得ることができなければ、
調査をやるだけ無駄です。

逆に言えば、売れる商品開発や、
効果的なコミュニケーションのためのヒント
(顧客洞察=インサイト)を得たかったら、
安易な「手抜き」をしてはいけません。

商品開発や、コミュニケーション施策には莫大なお金を
投じるにも関わらず、リサーチを軽視し、
十分な時間や予算、手間をかけないのはまさに本末転倒。

これは、先日書いた記事、

「思えばなる方式」からの脱却

でも指摘した通りです。

調査手法にはさまざまなものがありますが、
最もリッチな情報、すなわち、
磨けば光るインサイトの原石が含まれているのは

「観察調査」

でしょう。

これは、要するに「現場」に行くということです。

顧客が対象商品を選んだり、利用している様子を
じっくり観察する。ビデオに撮って繰り返し見る。

観察調査は、大変に面倒で、お金も時間もかかります。

しかし、情報のリッチ度と調査の面倒度は
相反する関係にあります。

私の感覚的なランキングではありますが、
情報が最もリッチ(裏返すと調査の面倒度)が高いものから
主要な調査手法を並べると次のようになるでしょう。

1.観察調査
2.個別インタビュー調査(デプスインタビュー)
3.グループインタビュー調査
4.アンケート調査
5.マーケターの思い込み(これは調査ではないですが)

顧客の理解度の深さが、
新商品やマーケティング施策の成功の鍵を握っています。

だとするならば、顧客理解のための調査には、
必要十分な手間と面倒をかけていただきたいと願っています。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

フォロー フォローして松尾 順の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。