数字の解釈:「達している」のか「過ぎない」のか

2008.12.02

仕事術

数字の解釈:「達している」のか「過ぎない」のか

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

私はリサーチの仕事を通じて、過去20年間にわたり、 アンケート結果や各種統計データなどの様々な数字を 扱ってきました。

現在の東京MXの計画によれば、
横浜市内の大半で視聴可能となり、
湘南、藤沢でも写ります。

神奈川県内総世帯の60%が
カバーされてしまう見込みです。

ただ実は、tvkを含む関東各県の放送局の電波も
東京都内に漏れており、各局とも自県に加えて都内も

「視聴可能世帯数」

にカウントしてきています。

tvkの場合、世田谷区や大田区を中心に
250万世帯が視聴可能であり、

「tvkは都民にも見られる(放送局)である」

というのは広告(コマーシャル)営業の前提になっています。

つまり、5局も東京MXと「同じ穴のムジナ」で
あるため、あまり強くは言えないわけです。

そこでtvkでは次のような説明をしています。

「先発局としてずっと(都内)で放送してきた。
 我々の都内への飛び出しは40%にすぎない」

先発局という点はさておき、
この数字の解釈はかなり苦しいと感じますよね。

40%というカバー率は、
東京MXの現時点での案における、
神奈川県内総世帯数のカバー率60%と比べると、
確かに20ポイント低い。

しかし、果たして

「40%に過ぎない」

と言ってしまっていいものでしょうか。

東京都内の世帯の40%がtvkを視聴可能

という事実だけを見ると、

「tvkが見られる都内の世帯は全体の40%にも達するのか」

というのが正直な解釈ではないでしょうか。

これは利権争いを有利に展開したいという思惑が感じられる
誘導的な数字の解釈の例です。

こうした、当事者の意図が色濃く反映された数字の解釈は、
企業の業績報告や、首相の支持率のような世論調査の発表記事
などでもよく見かけますね。

ほぼ同じ数字であるにも関わらず、ある新聞は、

「・・・に過ぎない」

と書き、別の新聞は、

「・・・に達する」

と書いていることがあります。

この場合、読み手の受ける印象は全く逆になりますから、
やはり「誘導的」な解釈になってしまうわけです。

数字の解釈は多くの場合、
主観的、恣意的であることを頭の片隅に置いて
様々な数字を眺めるようにしましょう。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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