トヨタiQはマス広告離れを加速するのか?

2008.11.21

営業・マーケティング

トヨタiQはマス広告離れを加速するのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

発売前予約4,000台。それに貢献したのは従来型のマス広告ではない。ネットプロモーションが中心だという。

「2008-2009日本・カー・オブ・ザイヤー受賞」。11月20日の日経新聞朝刊にトヨタiQのカラー全面広告が掲載された。紙面を目にした時、内容よりもこの車種がマス広告に登場するのは珍しいなと率直に思った。

iQはトヨタが技術の粋を凝らして開発した世界戦略車であり、低迷する国内販売状況を打開する起爆剤としても期待されている車種である。
<トヨタiQ商品概要公式ページ> http://toyota.jp/iq/index.html

普通車1台のスペースに2台が駐車できるほどのコンパクトなボディー。全長が3メートル弱と軽自動車の規格より短いのに大人が4人乗れる。それを実現するために投入された技術はイノベーションのカタマリである。
しかし、iQに驚かされるのは技術だけではない。マーケティング手法も従来とは全く異なる。その展開は以下のアサヒコムの記事に詳しい。

<トヨタ超小型車「iQ」 ネットPRで予約4千台超>
http://www.asahi.com/car/news/NGY200811200016.html

YouTubeにトヨタ自らが動画をアップしたり、試乗会体験者のBlogに公式ページからリンクを張ったりと、かなり細かなネットプロモーションを展開した。そして、<新車発表から発売まで1カ月以上あけ、通常は発売後に始める、ネットを窓口にした販売店紹介を事前に実施。事前注文だけで、月間販売目標(2500台)を大きく上回った>という。

自動車専門誌などでは取り上げられていたものの、発売2ヶ月前から試乗会まで開催しているのに、iQはマス広告にはほとんど登場していなかった。つまり、従来の車と全く異なる広告戦略を取っているのではないかと考えられるのだ。

ネットプロモーションだけではない、トヨタとしては異例ともいえるゲリラマーケティングも先月展開し、大きな話題を喚起した。もちろん、その様子もYouTubeにアップされている。
<2008年10月20日~26日に、東京銀座ソニービルで行われた驚愕の空中ダンスパ フォーマンス。地上高30mの垂直のストリートを舞台に、人が歩く、踊る。>
http://jp.youtube.com/watch?v=sPrcNVtBwpo

こうした先鋭的な一連の展開は、「イノベーターの取り込み」という目的であることが推測できる。
iQが技術の粋を凝らした画期的なコンパクトカーであることは間違いない。しかし、その価格は140万円~160万円と決して安くはない。単純にコンパクトな車を求めるのであれば、軽自動車や、通常の排気量1リッタークラスの小型車を選択するだろう。
しかし、価格を超えても、この車に新しい何かの価値を感じて購入するイノベーター層も確かに存在したのだ。それが事前予約4,000台という実績につながっている。ネットプロモーションにゲリラマーケティングという展開が奏功したのだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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