えっ?飛行機は壊れながら飛んでいる?

2008.11.07

経営・マネジメント

えっ?飛行機は壊れながら飛んでいる?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

先日、テレビを見ていたらNHKの番組で「アタック!25」の司会で有名な児玉清さんが、私の人生を変えた一冊で「不安定からの発想」佐貫亦男著を取り上げていた。

役者として悩んだときに自分に勇気をくれた一冊だそうで・・・
そこには、ライト兄弟は、何故、飛行機を飛ばすことに成功したのかが書かれている。
その当時の多くの科学者は、人間のつくる完全なものを空中で安定させることに躍起になっていた。
しかし、その固定概念がそもそもの誤り。
空中という不安定な場所に、安定を求めること自体が間違いだと気付いたから、ライト兄弟は飛行に成功したというのだ。

人間が操縦席に乗るなら、
その不安定を、自らの手で操縦することで空を飛べばいいじゃないか。
完全を求める科学者たちの発想を覆すパラダイムシフトがそこにはあると。
「安定」を手放すことによって、未来への飛行が可能になったということだ。

この番組を見ていて、過去に何度が仕事でご一緒したコンサルタントの高橋 広嗣(フィンチジャパン)のお話を思い出した。大学時代に、宇宙工学に携わった経歴の持ち主で、「破壊力学」が専門だったという。

スペースシャトルが、空中爆発をした理由。
日本に、飛行機を作る会社がない理由。
それらを高橋氏は、ひとことで・・・
「飛行機は、壊れながら飛んでいるから」と表現してくれた。

それら空中を飛ぶ人工物に使われる部材は、
軽いものの方が燃費はよくなるわけだから・・・
飛行の度に「き裂が入ること=破壊されること」を前提にしないと、
技術は前へ進まない。
そうじゃないと、飛行機もスペースシャトルも、
空へは飛び立てないと教えてくれた。

「き裂が入ること=破壊されること」を前提とした、
その破壊のマネージメント能力こそが、
人間が空を飛ぶためのキーファクターなのだ。

高橋氏の会社「フィンチジャパン」のホームページには、そこらへんのことが詳しく解説されているので、一部転載させていただく。

皆さんは破壊力学という学問をご存知だろうか。
破壊力学という学問は、破壊のメカニズムを明らかにし、そして人類が破壊を制御することを目標とした学問の総体である。この学問は現代になって急速に研究が進んだ分野の一つで、逆の言い方をすれば破壊という現象が人類に急速に身近になったがゆえに急速にその解明に対する必然性を帯びた研究分野とも言える。
そして現在、破壊力学が適用される分野はきわめて広範で、航空・宇宙分野に始まり、重電、架橋、大型ビル等々、大きな力(応力)が掛かる構造体には必ず適用されている。

さらに、その「破壊力学」は、経営・組織論に応用できると。

粘りのある部材、そして粘りのある企業
破壊がなかなか進まない部材を”靱性(じんせい)が高い”と破壊力学では表現する。学問的には破壊が生じ進展するのに必要なエネルギの限界値が高いということであるが平たく言えば、“靱性が高い部材”とは“粘りのある部材”ということである。粘りのある部材では、き裂の進展が遅く大規模な破壊に至らない。その一方で強度は高くない。先述のトヨタの生産ラインの例も、大規模な問題に至る前にカイゼンしていると言えば好事例だが、しょっちゅうラインを止めているとなれば、それはコストアップの悪例である。
部材において靱性の高さと強度の高さの双方を満たすということは容易ではないように、企業においてもそれは同様である。
とはいえ、粘りのある企業は小さなき裂に気づく場所(人)に大きな権限が与えられていることが多い。先述のトヨタ自動車の例しかり、最高のサービスを提供することで有名なザ・リッツ・カールトンの例しかりである。
破壊力学的観点でいえば、これら企業の強さは、き裂の進展を抑える体質を是としている点にある。き裂を発生させないことよりも、き裂の発生を必然としてどう粘り強く解決していくかを優先していると経営が表明しているのである。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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