偶発を必然化する力~秋のキャリア思索4冊

2008.11.03

組織・人材

偶発を必然化する力~秋のキャリア思索4冊

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「人生もキャリアも、ある意味“行き当たりばったり”でいいじゃないか」・・・私はキャリア研修でそう言い放っています。ただ、偶発を必然化する意識をもってのことですが。

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◆人生・キャリアはJazzだ
ジャズ音楽の醍醐味は、そのアドリブ(即興)にあります。
ジャズにおいては、とりあえず楽譜はあるものの
ミュージシャンたちはたいていその場その場の雰囲気でアドリブを仕掛けていく。

ジャムセッションで、演奏メンバーは何の曲をやるかは分かっていますが、
それをどう弾いて、結果、どう仕上がっていくかは、
本人たちにも想像がつかない。
当日の聴衆の雰囲気によっても左右されるでしょうし、
誰か1人が弾いたアドリブの一節が他のメンバーに引火し、
それがどんどん大きくなり、これまでにない演奏になる場合もあるでしょう。
ジャズの演奏の出来不出来は、もう演奏してみないと分からないわけです。

つまり演奏してみた結果、初めて
本人たちも「俺たちがやりたかったのはこういう演奏だったのだ」とわかる。

考えてみれば、人生もキャリアもジャズと同じようなものです。
自分の能力や意志、体力、経済力といったものを統合的に組み合わせて、
自らの生き様・働き様といった作品をこしらえていく。
しかし、ことはすべて型どおり、予定通りには進まない。
運や縁といった偶発のいたずら要素も大きい。
ですから、人間は毎日の生活を即興演奏しているともいえる。

アドリブとは「逸脱の創造行為」ととらえてもいいでしょうが、
この逸脱という試みは、基本的な演奏技術を習得し、
演奏の場数を豊富に経験した上で、
「偶発」に下駄を預けることの妙味を知っている者こそがやると、
すばらしいアウトプットを誕生させることができる。

私は、自分が行っているキャリア研修で
「人生やキャリアも、ある部分、
アドリブを意図的に楽しむという“行き当たりばったり”でいい」
と言っています。

ただし、
その上で、納得のいく生き様・働き様を表現していくためには、
もろもろの基礎力やイマジネーションがあってこそ、と付け加えています。
自分の意志も能力も経済力も脆弱なままでは、
逸脱を十分な創造人生までに変換することはできません。

◆「ハプンスタンス・アプローチ」~偶発を楽しめ!
キャリアは「計画された行き当たりばったり」でよい、とする研究成果を出したのは、
「Planned Happenstance Theory」を提唱した
米スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授です。

教授によれば、
キャリアは100%自分の意のままにコントロールできようものではなく、
人生の中で偶然に起こるさまざまな出来事によって決定されている事実がある。
そこでむしろ大事なことは、
その偶発的な出来事を主体性や努力によって最大限に活用し、チャンスに変えること、
また、想定外な出来事を意図的に生み出すように積極的に行動することだ
という論旨です。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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