「ミスド値下げ」に感じる不安

2008.10.29

営業・マーケティング

「ミスド値下げ」に感じる不安

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

原料高に苦しむ食品業界や外食産業では値上げラッシュが続いている。そんな中、ミスタードーナツは11月1日から商品の値下げを行うと発表した。いわゆる「逆張り」の戦略とも思えるのだが、実際には大きな不安が感じ取れる内容であった。

その意味からすると、ミスタードーナツは189円のパイを値上げで解消しようとすれば、200円を超えてしまうかもしれない。それは明らかにカスタマーバリューを超えることになるだろう。
Tech insightは<価格とサイズを同時に下げるというのは業界でも珍しい試み>と分析しているが、これは食品業界ではよく行われる「量目調整」という手法だ。
例えば、今年の6月に日経新聞が行った調査では、袋入りウィンナーの「シャウエッセン」が量目調整を行って、店頭価格277円から271円と、見かけ上6円の値下げをして売り上げを9%上昇させることに成功している。しかし、ドーナツやパイは袋入りウィンナーのように一見、減量が分かりにくい商品とは明らかに異なる。

昨今の原料高はもはや企業努力だけでは吸収しきれない段階になっているのは確かだ。かといって、カスタマーバリューを超える値上げはできない。ミスタードーナツの外食産業では珍しいとされる量目調整は苦渋の選択であったことはわかる。
しかし、その厳しい選択の結果であるという価格改定の理由が消費者に理解されるか否かという、最後の部分に大きな不安が感じられるのだ。

ミスタードーナツのニュースリリースによると、今回の価格改定を以下のように説明している。
<お客様がよりお買い求めやすい価格で商品を提供するため>とし、<お客様に“お手軽・お手頃”にご利用いただけるよう低価格の商品発売にも力を入れ、バラエティーに富んだ商品を取り揃えた“フレンドリー”なドーナツショップを目指します>と結んでいる。
いかにも小さくなった商品を見たとき、消費者はフレンドリーさを感じられるだろうか。

価格改定の理由は「お求めやすい価格での提供」や「フレンドリー」などというきれいな言葉ではなく、「やむなき実質値上げ」という真情を吐露し、消費者に理解を求めた方がよかったのではないかと思う次第だ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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