【変革を科学する#1】
チェンジマネジメントは論理よりも心理

2008.10.27

経営・マネジメント

【変革を科学する#1】 チェンジマネジメントは論理よりも心理

森川 大作
株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

改革プロジェクトはなぜ思うように進まないのでしょうか?チェンジマネジメントの世界についてご紹介します。

ところが、変革が思うように進まないほとんどの原因は、戦略の悪さや論理的な分析、進め方の問題というよりもむしろ、関わる人々の“心理的”な側面の影響なのです。システム開発プロジェクトに関する多くの著書を残しているワインバーグも、システムの仕事は論理的だと思いがちだがその多くは感情に基づいているのに、人々の気質の差異に目を向けないのはお粗末だと述べています。*3)変革に対する人々の心理的側面は、非常に曖昧で混沌としたものですので、その多くは体験談やストーリーの中で属人化しています。NHKのプロジェクトXなどはその最たる例でしょう。「技術は度胸だ」、「最後まで信じ抜く」、「挑戦者に無理という言葉はない」、「情熱を持ったプロフェッショナルになれ」など、言葉にした途端、その人が言うから重みはあるのだけれども、一時的な高揚感で終わってしまう感じが否めません。

一方で、リーダーシップ論の変遷に注目すると、心理的な側面を脇に置いてこれ以上は進めないといった感があります。ちょっと振り返ってみましょう。かなり遡って戦前の1940年頃までは、「特性理論」つまりリーダーシップは作られるものではなく生まれながらに持つ特質であるという先天論でした。ところが戦争中、数多くのリーダーを必要としたため、1940年以降は「行動論」、つまりリーダーシップは作られるものであり開発できるという後天論へと移り変わっていきました。1960年以降は、「条件適応理論」と言って、リーダーシップは単一のスタイルではなく状況と条件によって多様的に発揮されるべきであり、唯一最善の普遍的なものではないという考えが主流になりました。企業の多角化が進むにつれて多様性が求められるようになった背景があります。パス・ゴール理論はその典型的な例でしょう。*4)そして1980年以降、変革的リーダーシップ論が主流になりました。変革を実現するにはどんなリーダーシップを発揮すべきかに焦点を当てています。*5)これは先ほど述べたBPRのブームとほぼ時を重ねる背景があります。そして近年では、モチベーションやコーチングに注目してリーダーシップが論じられる傾向が強くなりました。つまり、心理的側面を扱えるリーダーが求められるということです。では、チェンジマネジメントの手法の幾つかをご紹介しましょう。

・・・次の記事に続く
http://www.insightnow.jp/article/2266

*1 リエンジニアリング革命(邦題) 1993 マイケル・E・ハマー 日本経済新聞社
*2 ブルーオーシャン戦略 2005 W・チャン・キム ランダムハウス講談社
*3 ワインバーグのシステム行動法 1991 G・M・ワインバーグ 共立出版
*4 MBAリーダーシップ 2006 グロービス・マネジメント・インスティチュート ダイヤモンド社
*5 リーダーシップ論 今何をすべきか 1999 ジョン・P・コッター ダイヤモンド社

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森川 大作

株式会社インサイト・コンサルティング 取締役

わたしはこれまで人と組織の変革に関わってきました。 そこにはいつも自ら変わる働きかけがあり、 異なる質への変化があり、 挑戦と躍動感と成長実感があります。 自分の心に湧き上がるもの、 それは助け合うことができたという満足感と、 実は自分が成長できたという幸福感です。 人生は、絶え間なく続く変革プロジェクト。 読者の皆様が、人、組織、そして自分の、 チェンジリーダーとして役立つ情報を発信します。

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