東進衛星予備校をめぐる
業界地図展望

2008.10.24

経営・マネジメント

東進衛星予備校をめぐる 業界地図展望

中土井 鉄信
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

学習塾業界では「東進ハイスクール」に加え、「東進衛星予備校」などを展開する株式会社ナガセが好調だ。ナガセの今後の戦略を占ってみると、業界地図を大きく塗り替える可能性を秘めているように思う。

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 大学受験予備校「東進ハイスクール」に加え、「東進衛星予備校」
などを展開する株式会社ナガセが、学習塾業界では、ここ数年来、
破竹の勢いだ。この成功の大きな要因は、同社の分かりやすいシン
プルな戦略にあるように思う。

 ナガセもベネッセと同様に、教育コンテンツ企業へ成長しようと
している。しかし、両者がが違うところは、ベネッセが、通信教育
を軸にし、その補完を学習塾に求めようとしているのに対し、ナガ
セは主戦場を学習塾という現場におき、在宅学習を補完機能と位置
づけている点だ。

 さて、そんなナガセが、今年秋から本格的に東進衛星予備校「中
等部」(以下、「中学部」)を売り出しはじめている。今までも、
細々とは進めていたのだが、今回は、公立中学生にターゲットを絞
って、地方に本腰を入れて売り出しはじめた。11月末までは加盟
金もとらない営業で、地方塾の囲い込みに入ったとみてよい。

 ナガセは2006年秋に買収した四谷大塚の「全国小学生統一テ
スト」で小学生の保護者にアピールし、その延長線上で、中学生の
保護者を捕まえようとしているのだ。

 加盟塾に対する中学部導入のメリットは、東進衛星予備校への持
ち上がりとなるだろう。中学生のうちから映像教材に慣れておけば、
大学受験へとスムーズに持ち上がれる。これで、ナガセのコンテン
ツは、小中高と貫徹していく。

 しかし、このシンプルな戦略は、地方大手学習塾の経営者には、
大きな葛藤を生むはずだ。

  今まで自助努力でのし上がってきた地方大手学習塾が、
 ドル箱である中学部で、そう易々とナガセの戦略に乗るだろうか?

  今まで培ったノウハウを捨ててまで、東進衛星予備校への持ち上
 がりのために、東進に乗るだろうか?

これは、中堅の地方学習塾でも同じだ。
この戦略は、体のよいナガセのFC塾になるということだからだ。
この抵抗感は、有形無形にあるように思う。

 しかし、東進衛星予備校がドル箱の学習塾は、「中学部」に部分的
に乗る可能性は大きいかもしれない。

 全面的にではなくとも、教科によって、東進衛星予備校「中学部」
を提案し、映像教材に慣れさせておくというものだ。既存の集団授業
とのハイブリッドとしての展開である。

 こういう乗り方であれば、ツールとしてコンテンツを導入し、その
先の東進衛星予備校へのブリッジになるかもしれない。

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中土井 鉄信

合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。

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