ねじの穴・・・セオドア・レビットの慧眼

2008.10.16

ライフ・ソーシャル

ねじの穴・・・セオドア・レビットの慧眼

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

マーケティングを勉強している人なら、 「ねじの穴」 というフレーズにはピンとくる方が多いでしょう。

マーケティング界のドラッカーと称された、

故セオドア・レビット氏(元ハーバードビジネススクール教授)

は、1960年代に発表した論文

『マーケティング発想法』

において「顧客志向」の重要性を認識させる

“顧客は、「ドリル」が欲しいのではなく、
 「ねじの穴」が欲しいのだ”

という名文句を残しています。

すなわち、顧客が買いたいのは、

「製品」

そのものではなく、その製品が与えてくれる

「便益」

であるということですね。

さて、セオドア・レビット氏は、

「マーケティングの神様」
(私に言わせると、「マーケティングテキストの神様」)

と呼ばれるフィリップ・コトラー教授ほどは
日本では知られていませんよね。

しかし、レビット氏の慧眼、
そして、ねじの穴の名文句でわかるように、
ものごとの本質を付くわかりやすい説明力には
驚くべきものがあります。

このことを再認識させられたのが、
2001年6月に行われた彼のインタビューです。

同インタビューの内容は、

『マーケティングの針路』

というタイトルで、

DIAMONDハーバードビジネスレビュー最新号
(November 2008)

に収録されています。

インタビューの中から、
いくつかレビット氏の言葉を引用してみましょう。

“ビジネスを突き詰めれば、たった二つの要素、
 つまり「金」と「顧客」をめぐるものです。
 立ち上げるために金が必要で、続けるために顧客が必要で、
 既存顧客を維持し新規顧客を獲得するために、
 またお金が必要となる。

 したがって、どのようなタイプのビジネスであろうと、
 「財務」と「マーケティング」が二大活動なのです。”

“そして、マーケティングとは(中略)、
 顧客を獲得し、維持する活動すべてを意味しています。
 さまざまなニューコンセプトが提唱されてきましたが、
 そのいずれもが必然的かつ本質的には

 「顧客の獲得と維持」

 へと行き着くのです。”

“私が以前から主張していたことの一つですが、
 「変化と適応こそ生存する唯一の方法」なのです。

 これはインターネットが登場する以前からの真理ですから、
 「何をすべきか」の答えは、マネージャーの頭の中や社内に
 存在するのではなく、外部環境によって決まるのです。”

“商品やサービスのライフサイクルの短縮化、消費者の
 ハイブリッド化など、不断に変化し続けるニーズや嗜好、
 これらに合わせて「バリュープロポジション(提供価値)
 の中身を変えていかなければなりません。(中略)

次のページ“未来を「予測」することはできないが、「予見」はできる”

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これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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