1000円パソコンが示す未来図

2008.08.14

仕事術

1000円パソコンが示す未来図

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

昨日、金森氏が『過激な「引き算」が進行するノートPC市場』を書かれた。その10ドルPCを開発しているインドでは、28万円の自動車が話題になった。こうした流れからはどんな未来が見えるだろうか。

快適さのためのコスト

金森氏が使われているのは、フルカスタムメイドのノートPCで約37万円だという。一度見せていただいたその真っ赤なLet's noteは、確かにカッコよかったしコンパクトでもあった。その中身もフルチューンされているのだから、性能も抜群なのだろう。

これに引き換え私が使っているのは、iBookである。ハードディスク容量はわずかに40ギガ、メモリー1ギガでCPUの性能がどうだとかいうことはよくわからないが、おそらくそんなにハイスペックではない。しかし、自分の仕事についてはこれで十分以上である。エディターとExcelとアウトラインプロセッサーとkeynote(Mac版パワーポイントですね)とFirefoxを同時に立ち上げていてもノンストレスである(確かにちょっと重いけれど)。

ただ、これが快適かといわれると、残念ながらそうじゃない。まず何より重い。そしてでかい。さらにバッテリーの持ちが今イチと、快適ではないところはいくつもある。ただし、いずれもまあ我慢できる範囲内のこと。逆にだから安い。快適さとコストはトレードオフの関係にあるのだ。

工作機械でもダウンスペックトレンド

森精機製作所はこれまで、一台あたりの利益率を高めるために高付加価値製品の開発に力を入れてきた。しかし、ユーザーインタビューの結果、とんでもないことがわかったという。すなわち「加工精度や加工性能など基本性能の改善は強く求められたが、オプションの豊富さなどはほとんど求められておらず、むしろ安くしてほしいという声が多かった(日経産業新聞2008年5月30日付11面)」。

そこで同社はオプションを徹底的に割り切って低価格化を実現した製品を投入、顧客から支持を得ているという。ただし低価格化とはいえ「既存製品に比べて極端に安いわけでもない。しかし『安かろう悪かろう』にならないギリギリのラインまで費用対効果を見極め、顧客層を広げる(前掲紙)」ことを狙っている。

快適さを割り切ることで実現できるもの

これまでは多くのメーカーが、基本的な機能を満たした後は『快適さ』をポイントに差別化訴求してきた。しかし、快適さを実現するためには、当然コストがかかる。資源も余分にかかる可能性もある。

これから、たとえばBRICs諸国や巨大マーケットとなっていくアジアでは、まず求められるのが超・低価格化である。ただしいくら価格を落とすと言っても、安かろう悪かろうではダメなのだ。考えるべきは、本来求められる機能を再定義し、その機能を果たすことに絞り込むこと。そのとき重要なのは、コスト(+おそらくは資源)とトレードオフの関係になりがちな『快適さ』はある程度犠牲にすると割り切ることだろう。

これからの新興国マーケットでの製品進化は、おそらくこれまでの先進国とは異なったパターンをたどることになるのではないだろうか。

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