過激な「引き算」が進行するノートPC市場?

2008.08.13

営業・マーケティング

過激な「引き算」が進行するノートPC市場?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

今月の初旬、<インド政府、10ドルノートPCの開発を計画中>の報道がネット上で話題となった。一方、日本市場においても10ドルはムリでも10万円未満のノートパソコンが急伸している。ノートパソコン市場は今後どこに向かっていくのだろうか。

筆者のメインマシンであるPanasonicのLet's note CF-W7はメーカー直販サイトでカスタマイズをしまくった結果、約37万円という価格で購入した。丈夫さ、軽さ、デザイン、色、CPUのスペックやメモリとハードディスクの容量など、唯一といって言い商売道具なので、こだわった結果だその値段になった。つまり、自分のこだわり=KBF(Key Buying Factor:購入する理由)をどんどん積み上げ「足し算」した結果である。自分としては満足のいく買い物であったが、果たして人にそれを勧めるかといえば、正直「そこまでは必要ない」ということになるのだろう。

とかく、ライフサイクルが成熟期を迎えた製品はスペックや様々な属性を「足し算」していくことで差別化を図ろうという傾向が強くなる。顕著な例が携帯電話である。あの小さな筐体に詰め込まれた、技術の粋を凝らした様々な機能の中で使われないものがいったいいくつあることか。ノートパソコンの場合も同様だ。

では、ノートパソコンに本来求められる価値とは何だろうか。何度も紹介している、コトラーの製品特性分析のフレームワーク、今回は5層モデルを再掲する。(図参照)
図示したとおり、今日求められる最も中核となる価値は、計算・文書作成に加えてインターネットができることである。極端な話、この中核が担保されれば、利用するに問題はないわけだ。よりストレスフリーにするためにスペックを向上させたり、外での利用時間を長くするためバッテリー容量を大きくしたりと、価値が「足し算」されていっているわけだ。しかし、足し算されていく属性は全ての人に求められているわけではない。

「10万円未満のノートパソコンがシェア4割」を伝える日経新聞8月11日の記事は以下の通り。
http://it.nikkei.co.jp/pc/news/notepc.aspx?n=AS2F2902S%2011082008

<7月の10万円未満のシェアは40.3%。うち6万円未満の超小型パソコンが約半分を占める。>という点も重要だが、<データ通信サービスの増加を背景に、ユーザーが出先でメールやインターネットを使うのに利用するケースが多い。「2台目需要が中心だが買い替えで選ぶ人も目立つ」>という点に注目したい。
つまり、足し算された属性のうち実態として求められているのは、中核たる価値で大半がように足りるということなのだ。

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コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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