バラク・オバマ氏にみるリーダーシップ

2008.08.09

組織・人材

バラク・オバマ氏にみるリーダーシップ

猪熊 篤史

米国大統領選挙に向けて民主党候補者に内定しているバラク・オバマ氏の活躍などを通してリーダーシップについて考えてみたい。

11月4日に投票が行われるアメリカ大統領選挙に向けて民主党候補となるバラク・オバマ上院議員が共和党候補となるジョン・マケイン上院議員を主要世論調査においてリードしている。オバマ氏のリーダーシップについて考えてみたい。

リーダーシップのあり方を概念的に表現すれば、外的な環境、リーダーの資質・能力、また、それらの適合という3つの視点で表現することができる。

外的な環境という面で重要なのは、共和党のブッシュ大統領が8年間政権を維持してるという事実である。そこには賞賛も批判もあるが、注目されるのは2001年9月の同時多発テロ、また、2003年3月に開戦されたイラク戦争である。ブッシュ大統領はテロとの戦いにおいて支持を得たが、イラク戦争の戦闘終結後も内戦によって死者は増え続けるなど、米国内でもブッシュ大統領の推進するイラク政策して批判が強まっている。また、住宅の所有率が増える中で貸出残高が増加したサブプライムローンとその焦げ付き、さらには、米国金融市場、世界金融市場、米国経済、世界経済に対する悪影響は、現在、深刻な問題となっている。

リーダーの資質・能力に関して、オバマ氏に対しては演説の上手さが指摘される。7月下旬には中東から欧州を歴訪して、ベルリンでの講演では20万人の聴衆を集めた。演説には、オバマ氏の若さ、活力、意志、自信などが表れているようである。

オバマ氏の評価の基盤にあるのは、基本的な人格、人物に対する評価だろう。ケニア生まれでイスラム教徒の父親と白人のアメリカ人の母親の間に生まれ、その後も母親のインドネシア人との再婚によってインドネシアで暮らしたこともあるオバマ氏の生い立ちは白人中心のアメリカ社会に対する一種の挑戦のようでもある。オバマ氏が大統領となればアメリカにおいて初のアフリカ系アメリカ人の大統領となる。一方で、マケイン氏が大統領になれば就任時に最高齢(72歳)の大統領になる。

イラク政策やサブプライムローン問題によって揺れるブッシュ政権に対する反発が変化を求めている。民主党においてオバマ氏と最後まで指名争いを展開したのは、やはりマイノリティとなる女性のヒラリー・クリントン氏だった。マケイン氏も、党派にとらわれず共和党政権を批判するなど共和党内では異端的な存在であった。

時代が変化を求める中で、基本的な人格と能力、その中でも、基本的な思考や判断力はもちろん、環境適応力(柔軟性)や人心掌握力、あるいは、コミュニケーション力が徹底的に問われているようである。リーダーとして本当の実力が問われるのは来年1月の大統領就任後になるが、大統領としてのビジョンが問われている。

カリスマ性を高めるオバマ氏と現職大統領の支持を受けるマケイン氏の今後の論戦が興味深い。大統領選の行方と次期大統領の政策や姿勢に注目したい。

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