ベンチャーの株はオプション 【2】

2008.07.10

経営・マネジメント

ベンチャーの株はオプション 【2】

猪熊 篤史

ベンチャーなど成長企業の株式について引き続き考えてみたい。

株式の仕組みや取引上のルールは特殊である。株価、ならびに、その取引全体となる株式市場は、経済状況、産業情勢、市場動向、企業活動や個人の消費活動、また、それら活動における心理を反映する。

株式の取引に関わる重要なテーマの1つは「情報の非対称性」である。これは、情報の送り手と受け手で持つ情報量が異なるという問題である。通常、情報の送り手がより多くの情報を持っていて、情報の受け手が持つ情報は限られる。情報の送り手の情報の質、あるいは価値は高いが、情報の受け手の情報の質や価値は低くなる。それでも情報の送り手が過度に主観的・個別的である場合は、情報の受け手の方が客観的・全体的で情報量が多く、また、情報の質や価値も高いこともある。

売り手である株式の発行者である企業と株式の買い手である投資家や株式の引受け手の間には情報格差が生まれる。

企業は、その企業内部の事情を良く知っているが、企業外部の投資家は企業内部の事情を良く知らない。企業が十分に情報を開示しても、コミュニケーション上の問題によって情報を受け取る投資家が得る情報の量は発信される情報量よりも少なくなってしまう。情報の内容や価値も送り手と受け手の間で差が出てしまう。

企業は、計画的なコミュニケーションによって、発信する情報をコントロールすることができる。これに対して情報の受け手である投資家は、基本的には受身になる。情報の受け手である投資家の行動は、基本的には、情報を信用するか、信用しないかの2つである。情報の送り手である企業は発信する情報の内容を操作することができるし、嘘をつくことも出来る。企業の優位性を示すことによって企業の価値を表す株価を高めることが出来る。しかし、実際の株価や企業全体の価値を決めるのは、説明や計画ではなく実態である。適切な企業活動とそれに対する投資家の期待なしに本当の企業価値や株価は生まれない。企業の活動次第で企業全体の評価や株価は変動する。 (次回に続く)

【V.スピリット No.66より】

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