ワントゥーワンは目指すべきものなのか?

2008.07.02

営業・マーケティング

ワントゥーワンは目指すべきものなのか?

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

マーケティングの知見は、広く普及してきました。今時、どんなに小さな企業でも、マーケティングと関係のない部門でも、「この商品のターゲットは20代女性で・・・」といったことは語るようになってきました。この状況は、マーケティングの知見を広めようとする者としては、喜ばしいことだとは思います。

「わが社には、戦略がないことが戦略です」、「わが社のターゲットは全ての人なのです」といったことを平然と言う経営者の方が昔は多かったそうです。高度成長期においては、大規模なリソースを投下し、オペレーション効率を上げ、マスメディアでの広告宣伝をすれば、ビジネスが回っていくので、これはある意味で仕方のないことです。

 ただ、いわゆる90年代、失われた10年と形容される時代に、ターゲットに対して何も考えていないのに売れる、といった状況は発生しにくくなりました。いわゆる平成不況の時代です。とにかくモノが売れない。本当に売れませんでした。そんな中、なんらかの特徴を持っているというか、尖っているというか、そういう商品が比較的売れていました。

 ホースの口を絞れば水の勢いが増すように、ターゲットを限定したコンセプトの商品のほうが、顧客に対する訴求力は強いということは、その時代に多くの人が実感を持って学びました。

 そういた状況もあいまって、この時代に、いわゆるダイレクトマーケティングノウハウがもてはやされました。不況だというのに、高収益を上げる通販企業は格好の研究対象でした。そして、いわゆるIT革命に伴い、データベースマーケティングというものが、それとセットで語られるようになりました。いわゆるCRM概念です。

 その創成期には、コンティニュアスリレーションシップマネジメントの略語でしたが、一般への普及に際してはカスタマーリレーションシップマネジメントと呼ばれるようになりました。通販企業は顧客をデータベースで管理し、ワントゥーワンで施策を打っているということは、非常に衝撃的でした。大学の先生でこういったことを研究される方々の中には、「ワントゥーワンマーケティング」という概念提唱をされた方も多かったと思います。

 ただ、その論調は、「マスマーケティングは大衆を一緒くたに扱うというやり方は企業の都合であって、根本的に間違っている。人は1人1人違うのだから、その違う1人1人にきめ細かなサービスをすべきなんだ!民主主義的に人は1人1人扱われるべきなんだ!」というややイデオロギー的とも言えるものでした。

 通販企業の行っているワントゥーワンも、ある意味で顧客の細分化に過ぎません。確かに、コールセンターに電話がかかってきた場合などは、電話番号を登録したりすることで、誰からの電話であるのか、そのお客様の購買履歴、といった情報が表示され、対応パターンのリコメンデーションがコンピュータによってなされます。しかし、本質的には、どういうお客さんに、どういう頻度でダイレクトメールを打つと、いくらぐらいの売上が見込まれるのか?といったものものです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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