伊藤園の「 お~いお茶 お抹茶 」は救世主となりえるか?

2008.06.28

営業・マーケティング

伊藤園の「 お~いお茶 お抹茶 」は救世主となりえるか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

何ともユニークなペットボトル緑茶飲料の発売が報じられた。「 お~いお茶 お抹茶 」。 何でも<「抹茶入りキャップ」を採用。新鮮で豊かな旨みの抹茶を手作りで味わえる 飲用時に抹茶と天然水を混ぜ合わせて作る抹茶飲料>とのことだ。発売の狙いは何だろうか。

「 お~いお茶 お抹茶 」は6月30日(月)より発売開始。発売エリアは1都9県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、山梨、長野、静岡)ということなので、まだテスト販売の段階と考えた方が良いだろう。
http://www.itoen.co.jp/news/2008/062607.html

その製品仕様はかなりユニークだ。
<キャップを開栓すると、抹茶が内フタとともにペットボトル内の天然水に混ざり、溶け合います。再度キャップを閉めて、よく振っていただくと、鮮やかな緑色をした抹茶ができあがり、お飲みいただくことができます。>
キャップに抹茶が仕込まれており、ボトルの中身は天然水のまま。つまり無色透明のミネラルウォーターそのものの状態。「お~いお茶」のラベルが貼ってあるとはいえ、緑茶飲料を買おうとして、何やら水しか入っていないように見えるボトルにに手を伸ばすのはちょっと抵抗感があるが、慣れてしまうのだろうか。

しかし、自分で振って混ぜて完成させるというのは、なかなか斬新であり楽しそうだ。煎茶・玉露なら、ちゃんと淹れてくれてないと、これまたちょっと抵抗感があるが、抹茶だと聞けば、混ぜ合わせていただくのもなんとなく納得してしまう気がする。

では、この製品が上市される意味とは何だろうか。
伊藤園は6月4日に2008年4月期の連結決算を発表している。1992年の上場以来、初の営業減益である(前期比16%減)。売上高は6%増の3280億円。主力の「お~いお茶」も販売数量5%増であったが、急速に伸びてきた反動で緑茶市場が縮小した影響とのコメントであった。
この先は分からないが、目下、主力市場が縮んでいる。伊藤園には野菜飲料もあり、こちらでも熱い戦いを繰り広げている。コーヒー飲料はタリーズブランドを手中に収めてから、得意のコンビニルートで拡販中だ。しかし、緑茶飲料が最も重要であることは変わらないだろう。

縮む市場を前に、どう動くのか。一つは新たな顧客層を開拓して、パイを拡大すること。もう一つは、限られたパイをよそから奪うしかない。

新しい顧客層の開拓という意味では、「 お~いお茶 お抹茶 」の「振って飲む飲料」という新規性が、あまり積極的に茶を飲まない層の開拓に効果を発揮できるだろう。
また、「開封して作る新鮮なお茶」という側面は、ペット容器に入ったまま売られている緑茶飲料に、「淹れたてでない茶は飲まない」という抵抗感を示す層に対してアピールできるだろう。キャップを開け閉めして水に抹茶を落とし、振って飲むという、一見、面倒そうなプロセスは一つの突破口となるかもしれない。

次のページ「緑茶飲料・秋の陣を占う」

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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