人間関係の借り倒しと貸し倒れ

2008.06.13

ライフ・ソーシャル

人間関係の借り倒しと貸し倒れ

横井 真人
産業能率大学 教授

皆さん、誰に借りがあり、誰に貸しがあるかを考えたことがありますか?無意識の借りがあったとしたらどうでしょう。

と、言うように、貸し借りの概念は私たちの
認識外のところで私たちの行動に大きな影響を
与えているのです。
厄介なのは、この貸し借りに対する感情が
もつれてしまった時です。
冒頭の熟年離婚の例で言えば、
積年の夫への「貸し」の感情が怒り、恨み、軽蔑
などの強いマイナス感情に結びついてしまった
結果だと言えましょう。
もし世の旦那様方が夫婦における貸し借りと
それにまつわる感情を、
会社の取引先や社内政治における貸し借りと
同等に認識し、対応していれば、
寂しい老後を送る必要も無いでしょうに。

貸し借りの概念は例えばビジネス上の
クレーム処理にも応用できます。
折角買った商品が不良品だった。
大事な洋服をウェーターが汚してしまった。
これらは会社側が顧客に対して借りと作ってしまった状態です。
本来なら支払う価格と商品・サービスの価値は
イコールのはずが、ミスにより大きく天秤が
傾いてしまうこともあります。
その時、もし顧客に対し、その借りを返す以上
の対応をしたならどうでしょう?
「ここまでしてくれるの」と顧客が思ったなら、
その時点で天秤は反対に傾き、
会社の顧客に対しての借りは貸しに変化します。
恐ろしいことに前者の天秤では不快、不満、怒り
というマイナス感情が伴っていたのに、
後者の天秤では喜び、期待、感謝
というポジティブ感情に変わっているのです。
ピンチはチャンスとはよく言ったもので、
起こってしまったミスからお得意様を作り出す
ことは可能なのです。

人間関係の貸し借りというと、
なんか世知辛い印象を受けますが、
考えれば「義理」なんていう観念も根本には
借り(受けた恩)を返すのが道理
というところから発生しているような気がします。
この考え方は日本だけでなく、広く東洋、
あるいは西洋においても共通概念と考えます。
さて、私たちは誰に恩を受けているのでしょう。
考えてみれば最近廃れ始めたお中元やお歳暮とは、
受けた恩を思い返すいい機会なのかも知れません。

以上

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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