低価格PCとして人気の、ASUS社EeePC。ついにカラーバリエーション化が進んでいる。それはコモデティー戦争の一つの形を表しているといえるだろう。
量販店の店頭モデルはいつ、誰が買っていくかわからない。当然流通在庫が多くなる。不効率である。
しかし、もはやノートPCはコモデティー化している故、差別化が図れない。そこで、カラーバリエーションとなる。
筆者は昨年4月にこの傾向を「花盛りのカラーバリエーション戦略が発するシグナル」というコラムで指摘したが、
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2007/04/post_f24c_1.html
1年強経って、その傾向は一層顕著になってきているように思われる。
何故、カラーバリエーションがコモデティーにおいて顕著になるかは上記リンクでコラムを確認いただきたいが、その要諦であるフィリップ・コトラーのフレームワークで紐解いたノートPCの価値構造(5層モデル)を図示する。
つまりは、本来求められても、明らかに期待されている部分でもない、目の前に提示されればうれしいというような、潜在的な価値の部分でしかもはや競争ができなくなっていることを表しているのだ。
さて、低価格PCに話を戻そう。
低価格PCは低価格である故、投下できるコストが限られている。少し前の世代のCPUやOSもXP-Home(これはある意味、結構なことだが)だし、液晶サイズも小さい。DELLやHPが指の太い米国人にはさぞや扱いにくいだろう小さなキーボードを搭載したミニノートを発売するのは、液晶サイズを大きくしたくないということが一因だろう。低価格化が進んだとはいえ、液晶はまだまだ高い部品だ。
故に、様々な枯れた技術や部品の組み合わせの妙を競い合うことはできても、各社とも画期的な差別化は低価格PCでは図りにくい。
そこで、「カラーバリエーション」なのではないだろうか。
流通在庫はやはり問題だが、一つには小型ノートなので、パッケージが小さいことがあげられる。EeePCを購入したときのパッケージは一昔前のパッケージソフトの箱を一回り大きくしたようなサイズだった。物理的に在庫スペースをとらないのは大きいだろう。
もう一つは、やはり価格だ。流通在庫が発生するとしても、高価格な製品を抱えるのと低価格なのではずいぶんと条件が異なるはずだ。また、EeePCは発売直後、すぐに店頭完売をしてしまったように、在庫回転率が高いとも考えられる。
普通のやり方をすれば、カラーバリエーションは危険なうち手であるが、こと、低価格PCに関しては極めて有効な施策となるのだ。
いよいよノートPCも電卓並みのコモデティー商品になっている。電卓ならカラーバリエーションも奇抜なデザインでも何でもアリだ。
ますます、これからも低価格PCはビックリするような製品の登場が予想される。通常のPCとは別モノと考えた方がいいだろう。今後の動静に注目である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。