名ばかり店長問題とマクドナルドの巧妙な戦略

2008.05.26

経営・マネジメント

名ばかり店長問題とマクドナルドの巧妙な戦略

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

マクドナルドが、極めて重要な意思決定を行なった。8月以降、店長に残業代を支払うことを決めたのだ。その背後には、外食産業No.1企業としての巧妙な戦略があるのではないか。

マクドナルドは従来、店長が管理職であることを理由に残業代を払っ
ていなかった。ところが、これを不服とした現店長から訴訟を起こさ
れてしまう。判決は今年1月、東京地裁で下され同社は敗訴、約750
万円の残業代支払いを命じられる。

もっとも、だからといってすんなり判決を受け入れたわけではなく、
控訴中である。店長への残業代支払いを決めた後も、控訴は取り下げ
ない方針であることを明らかにしている。では、なぜ控訴を続けなが
らも一方では、店長に対する残業代支払いを決めたのだろうか。

意思決定の狙いは大きく二つの要素があると思う。一つは、これ以上
のイメージダウンを避けることであり、もう一つは外食産業No.1の
ポジションを活かしての競合弱体化である。

まずイメージダウンを避けること、これが直接的な理由であることは
間違いないだろう。たとえ地裁判決とはいえ「店長を(実権も与えて
いないのに)管理職とみなし、残業代を払わない」悪い企業、という
イメージが広まることは、外食産業にとって命取りとなりかねない。

No.1企業であるが故に、マスコミ各社からの報道も手厳しい内容と
なりがちだ。ここは裁判はともかくとして、ひとまずマスコミひいて
は世間からの強い風当たりを避けることが、喫緊の課題となったこと
は容易に想像できる。そこで店長にも残業代を支払うことにした。

ただし、である。ここからがマクドナルドのしたたかなところだが、
同社はこの厳しい状況を逆に自社に有利に活かす戦略に出たのではな
いだろうか。すなわち業界No.1企業だからこそ採りうるNo.2以下の
企業に対するダメージ戦略である。

業界トップのマクドナルドが方向転換し、店長に対する残業代支払い
を決断した。この決断に対して異を唱える者は誰もいない。マスコミ
も消費者も「さすが、マクドナルド!」と好意的に反応するはずだ。
これにより名ばかり店長は管理職ではなく、残業代を払うのが当たり
前といった世論が形成されるだろう。

そうなったとき2位以下の企業は、どんな対応を迫られるだろうか。
「店長に残業代を払わないのは、あくどい企業だ」といったムードが
醸成されてしまえば、人気が頼りの外食産業はイメージダウンを避け
るために店長に対しても残業代を支払わざるを得ない。これこそがマ
クドナルドの方針転換の隠された狙いである、と読むのはうがち過ぎ
だろうか。

マクドナルドは、報酬制度全体を見直すために、残業代を支払っても
人件費の総額は変わらない、とコメントしている。これが本当かどう
かは次の決算が出るまではわからない。が、実際には程度問題はある
にせよコストアップ要因となるはずだ。

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