ソニーの遺伝子はまだ残っているのか?

2008.05.23

経営・マネジメント

ソニーの遺伝子はまだ残っているのか?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

今年2008年は、 ソニー創業者である 井深大氏 の生誕100年だそうですね。

先日、井深氏の直接の薫陶を受けた元ソニー上席常務、
天外伺朗氏のご講演を聴く機会がありました。

天外氏のお話は、
さすがソニーが誇る奇人変人のお1人だけに
ぶっ飛んだ内容でした。(内容のご紹介はまたの機会に)

面白かったのは、講演後の質疑応答の時間です。

聴衆の1人が、

「わが社は大変な状況になっているのですが、
 いったいどうしたらいいでしょうか?」

と質問したのに対し、天外氏が、

「あなたの勤めている会社はどちらですか?」

と質したところ、
最初は社名を出すのは差支えがあるといいつつも、

「実はソニーです・・・」

と答えたので、
会場が大いに沸いたというわけです。

ただ、現ソニー社員の質問に対する
天外氏の回答は率直でした。

「もはや図体がでかくなってしまったソニーは
 一朝一夕では変わらない。良くなるまでには
 まだ時間がかかりますよ」

といったみもふたもないもの。

天外氏は、2000年代前半に起きた

「ソニーショック」

を役員として経験されているだけに、
実感のこもったお答えではありました。

ソニーの直近(2008年3月期)の業績は、
純利益で過去最高を更新しており、
私たちが世界に誇れるスーパーブランド

「ソニー」

が復活しつつあるのは確かでしょう。
しかし、現場の状況はまだまだ厳しいようです。

さて、ソニーの近年の凋落の要因は、
天外氏も指摘しているように、
組織が大きくなったための

「大企業病」

に罹ってしまったためです。

ベンチャー精神あふれる革新的な企業であった
ソニーでさえ、組織が肥大化するにつれて陥ってしまう
様々な罠から逃れることができなかったのです。

元ソニーの横田宏信氏は最近出た著書の

『ソニーをダメにした「普通」という病』

で、ソニーは

「普通」という病(普通病)

に蝕まれてしまったことを具体的な

「症例」

を挙げながら解説しています。

なお、「普通病」とは、
端的には、大企業の多くが陥りがちな

「悪しき企業文化」

と解釈すればいいようです。

例えば、

・「会社のため」とを振りかざした内輪の論理が
 まかり通るようになったこと

・「そんなの聞いてない」とダダをこねる社員が
 増えたこと

・自分たちの技術で何ができるかという「機能価値」を
 優先しがちで、ユーザーがどう楽しめるかといった
 「使用価値」を軽視していること

・以前は、部門間の壁が低いカオス的な組織であったのに、
 今や縦割りのサイロ型になってしまったこと

・ソニー流よりも米国流を信奉する、いわゆる
 「米国かぶれ」の傾向が強まったこと

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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