2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ 私がコーチング研修をやって、やめた理由 前回は、昭和の会社から現在までを振り返りながら、なぜ「共感」や「傾聴」が重要になってきたのかを考えました。
2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ
私がコーチング研修をやって、やめた理由
前回は、昭和の会社から現在までを振り返りながら、なぜ「共感」や「傾聴」が重要になってきたのかを考えました。
会社の中に多様な人が増えた。
女性活躍が進み、働き方もキャリアも変わった。
家庭でも共働きが増え、「イクメン」という言葉が生まれた。
つまり、
「みんな同じ」を前提にしたマネジメントが通用しなくなった。
では、企業の管理職教育はどう変わったのでしょうか。
私自身の経験で言えば、その大きな転換点の一つが、
コーチング
でした。
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昔の上司は「答えを教える人」だった
昭和型の管理職育成では、基本的にティーチングが中心でした。
上司には経験がある。
部下には経験がない。
だから、
「こうやるんだ」
「まずこれをやれ」
「分からなければ俺に聞け」
と教える。
これは別に悪いことではありません。
新人に仕事を教えるときなど、今でもティーチングは必要です。
私自身も長い間、
上司とは、部下より多くの答えを持っている人
だと思っていました。
ところが、時代が変わってきます。
仕事が複雑になる。
専門性も高くなる。
価値観も多様になる。
上司がすべての答えを持つことなど、できなくなっていく。
そこで注目されるようになったのが、
「答えを教える」のではなく「本人から答えを引き出す」
という考え方でした。
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「君はどう思う?」
私は、この言葉をとても大切にしてきました。
部下が、
「どうすればいいですか?」
と聞いてきたときに、
すぐ答えを教えない。
「君はどう思う?」
と返す。
簡単なようですが、これが結構難しい。
特に、私のような問題解決が大好きな人間には難しい(笑)。
だって、聞かれた瞬間、
「あ、それならこうすればいい」
と答えが浮かんでしまうからです。
しかも、経験のある上司ほど、この罠にはまりやすい。
答えを知っている。
だから教えたくなる。
しかし、それを繰り返していると、
上司はどんどん問題解決が上手になり、部下はどんどん上司に聞くようになる。
これでは、自立型人財は育ちません。
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コーチングで学んだ「傾聴・質問・承認」
そこで私が重視したのが、コーチングでした。
実践の中で特に大切にしたのが、
傾聴・質問・承認
です。
まず、話を聴く。
そして、
「君はどう思う?」
と質問する。
本人が考えたこと、行動したこと、成長したことを承認する。
上司が答えを与えるのではなく、
本人が考え、本人が答えを見つけ、本人が動く。
これは、私が目指していた自立型人財の育成とも非常に相性がよかった。
だから私は、コーチングを管理職教育にも取り入れていきました。
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ところが、アンケートでは大成功だった
研修を実施すると、反応はいい。
受講者も、
「勉強になった」
「部下とのコミュニケーションに使えそうだ」
「明日から実践したい」
と言う。
アンケートを見れば、
成功した研修
に見えます。
普通なら、ここで終わります。
研修担当者としても、
「満足度が高かった」
「理解度も高かった」
「良い研修だった」
と報告できる。
でも私は、研修のアンケートをあまり信用しなくなっていました。
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本当に現場で使っているのか?
研修の目的は、
研修を受けて「良かった」と言ってもらうことではない。
人の行動が変わること。
そして最終的には、
職場が変わること。
だから、私は研修後に現場へ確認しに行くようになりました。
当時の取材記事にも、その考え方が残っています。
「アンケートだけではなく、行動が変わったかを常に確認しに行きます」
つまり、研修直後の満足度ではなく、
「で、実際に使っているの?」
を見に行ったわけです。
そこで、かなりショックなことが分かりました。
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コーチング、使われてないじゃん(笑)
研修では評価されている。
コーチングそのものについても、
「いいですね」
と言ってくれる。
ところが現場に戻ると、
使われていない。
これには考えさせられました。
研修を受けた。
知識も得た。
本人も「役に立つ」と思った。
それなのに、行動は変わらない。
つまり、
「分かった」と「できる」と「やる」は、まったく違う。
ということです。
当時の取材記事でも、私はコーチングについて、
有意義なツールではあるが、全社に展開するのはいったん保留し、本当に必要とする人が出てきたら行う
という方向に変えたことを話しています。 人材教育201403号 (002).pdf
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私は「コーチングはダメだ」と思ったわけではない
ここは大事なところです。
私は、
「コーチングなんて役に立たない」
と思ったわけではありません。
むしろ逆です。
傾聴。
質問。
承認。
これらは、人を育てるうえで非常に重要な力だと今でも思っています。
だから後に作るパワーアップ研修にも、この考え方を取り入れていきます。
問題だったのは、
「良いものだから、全員に研修すれば使われるだろう」
という発想でした。
人は、研修を受けたからといって変わるわけではない。
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魚を釣りたくない人に、釣竿を渡していた
当時の取材で、私はこんなたとえを使っています。
「魚釣りをしたいと思っている人に釣竿をあげる」
コーチングも同じです。
本人が、
「部下との関係を変えたい」
「もっと部下を育てたい」
「自分のマネジメントを変えたい」
と思っていなければ、
いくら立派な「釣竿」を渡しても使わない。
研修担当者が、
「これは素晴らしい手法です!」
と言って配って回るだけでは、人は変わらないのです。
この経験は、その後の私の研修設計に大きな影響を与えました。
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そして、もう一つの疑問が生まれた
ただ、私の中にはもう一つ、引っかかるものがありました。
コーチングでは、
「君はどう思う?」
と問いかける。
本人の中にある答えを引き出していく。
これは素晴らしい。
でも――。
そもそも、答えを考えられる状態ではない人はどうするんだ?
仕事で傷ついている。
自信を失っている。
将来が不安だ。
人間関係に悩んでいる。
何をしたいのか、自分でも分からない。
そんな人に、
「で、あなたはどうしたいですか?」
と質問しても、
「それが分からないから困っているんです」
となることがあります。
ここで私は、
「引き出す」より前に、何か必要なのではないか
と考えるようになります。
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コーチングから、カウンセリングへ
そこで私が学び始めたのが、
カウンセリング
でした。
コーチングで大切にしてきたのは、
傾聴・質問・承認。
そしてカウンセリングを学ぶ中で、私が改めて重要だと感じたのが、
傾聴・受容・共感。
ここで私の中で、人財育成に対する考え方が少し変わります。
「どうすれば、この人を動かせるか」
ではない。
「どうすれば答えを引き出せるか」
だけでもない。
その前に、
「この人は今、何を感じているのだろう?」
がある。
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これは、あの女性部下の言葉につながっていた
ここで、序章に書いた女性部下の言葉が、もう一度よみがえってきます。
「あなたは、話を聞いてくれるだけでいいんです!」
当時の私は、
「話を聞くだけなら、他の人に話せばいいじゃん😂」
と思った。
でも、カウンセリングを学んでいくと、
「話を聞くだけ」の意味が変わってきます。
ただ黙って聞くことではない。
相手を受け止める。
否定せずに聴く。
その人が感じていることを理解しようとする。
つまり、
受容・共感・傾聴。
彼女が求めていたものを、私はずっと後になって理論として学んだわけです。
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ティーチング→コーチング→そしてカウンセリング
振り返ってみると、私自身の人財育成の歩みは、
ティーチング
↓
コーチング
↓
カウンセリング
と変化してきたように思います。
ただし、前のものを捨てたわけではありません。
教えるべきときには、教える。
本人に考えてもらうときには、質問する。
そして、その前に受け止める必要があるときには、まず聴く。
使い分けるのです。
管理職に必要なのは、一つの技法ではない。
相手の状態を見ながら、
教えるのか。
問いかけるのか。
受け止めるのか。
を選べることなのだと思います。
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しかし、私の試行錯誤はまだ終わらなかった
コーチングを学び、
カウンセリングを学び、
人を動かすことより、人を理解することの大切さも分かってきた。
それでも、私はその後もう一度、大きな壁にぶつかります。
40代以上、そして退職が見えてきた人まで含むミドル世代を、
どうすれば、もう一度元気にできるのか。
当初、私たちは「モチベーションを上げる」ことを考えました。
しかし、私はだんだん疑問を持つようになります。
そもそも、他人が人のモチベーションを上げることなんてできるのか?
この疑問から、約1年間の研究が始まります。
そして最終的に、
「モチベーション研修」をやめる。
そこから生まれたのが、
「強制しない――自分から動く」パワーアップ研修
でした。
この連載の一つの大きな到達点です。
https://note.com/bostonmio/n/n1a1ac3f78021
【なぜ今「共感」なのか?】
2026.10.11
2026.10.15
2026.10.28
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
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