0️⃣ 序章 なぜ今、「共感」なのか? 昔の会社では、こんなに「共感」なんて言わなかった 最近、マネジメントの世界で「共感」という言葉を本当によく聞くようになりました。
最近、マネジメントの世界で「共感」という言葉を本当によく聞くようになりました。
心理的安全性。
1on1。
エンゲージメント。
ダイバーシティ。
キャリア自律。
そして管理職には、
「部下の話を傾聴しましょう」
「相手を受容しましょう」
「まず共感しましょう」
と求められる。
でも、ちょっと待ってください。
昔の会社で、こんなこと言ってましたっけ?
少なくとも、私が若かった頃の会社では、今ほど聞いた記憶がありません。
むしろ求められたのは、
早く判断する。
結論を出す。
問題を発見する。
原因を突き止める。
そして解決する。
仕事ができる人とは、そういう人でした。
私自身、まさにそのタイプでした。
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20歳の頃、「俺もよく相談される」と思っていた
20歳の頃のことです。
ある女性が、
「私、よく人から相談されるんだ」
という話をしていました。
私はそれを聞いて、
「俺もよく相談されるよ」
と思いました。
当時は、彼女と自分は同じタイプだと思っていたんです。
ところが、ずっと後になって気づきました。
全然違った。
彼女は、人の話を聴くのがうまかった。
私は――
問題を解決するのがうまかった。
私は昔からアイデアを考えるのが好きでした。
何か相談されると、
「原因はこれじゃないか」
「だったらこうすればいい」
「いや、そこを直してもまた起きる。根本原因は何だ?」
と考える。
相談された以上、何とかしてあげるのが親切だと思っていたんです。
そして困ったことに(笑)、それで仕事では結構うまくいった。
⸻
「よく分からない。でも、言う通りにすると、なぜかうまくいく」
後になって、ある部下が私について、こんなことをこぼしていたと聞きました。
「言っていることが、よく分からないんだよね」
これは結構ショックです(笑)。
ところが、その後に続きがありました。
「でも、言われた通りにやっていると、なぜかうまくいくんだよね」
なんじゃそりゃ(笑)。
当時の私なら、
「ほら、うまくいったじゃん」
で終わっていたかもしれません。
でも今なら分かります。
私は相手の話を聞いていなかったわけではない。
ちゃんと聞いていた。
ただし――
「解決するために」聞いていた。
相手がどう感じているのか。
どこまで理解できているのか。
本人はどうしたいのか。
そこを十分に聴く前に、私の頭の中ではもう問題の構造ができあがり、解決策へ走っていたのでしょう。
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そして50歳頃、ついに女性部下に言われた
それから約30年。
ある女性部下から相談を受けました。
当然、私は一生懸命考えます。
どうすれば解決できるのか。
しかも私は対症療法が嫌いです。
やるなら根本解決したい。
ところが、彼女に言われました。
「あなたは、話を聞いてくれるだけでいいんです!」
えっ?
私は本気で思いました。
「話を聞くだけなら、他の人に話せばいいじゃん😂」
今考えると、ひどい(笑)。
でも、本当に分からなかったんです。
困っている。
だから相談する。
相談された。
だから解決する。
私の中では完璧に筋が通っていました。
そして、ふと思った。
待てよ。
20歳の頃から私は「よく相談される」と思っていた。
ということは……
もしかして30年間、みんな「そうじゃないんだよな」と思っていたのか?😂
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テレビを見ていたら、主婦たちが怒っていた
その後、テレビのバラエティ番組などを見ていると、似たような話が何度も出てきます。
妻が夫に、
「今日こんなことがあって大変だった」
と話す。
すると夫が、
「だったら、こうすればいいじゃん」
と解決策を出す。
すると妻たちが怒る。
「そういうことじゃない!」
「解決してほしいんじゃない!」
「ただ話を聞いてほしいの!」
私はテレビを見ながら思いました。
「あれ? これ、俺じゃん😂」
⸻
しかし、これは「男と女」の話だけなのだろうか
以前の記事で、私は黒川伊保子さんの男女のコミュニケーションの違いについて紹介しました。
黒川さんは、男性側にはスピードや結論、問題解決を求める傾向があり、一方で共感を重視するコミュニケーションもある、という趣旨の説明をされています。
もちろん、すべての男性、すべての女性がそうだという話ではありません。
ただ、私自身の経験を振り返ると、
「なるほどなあ」
と思うことがたくさんある。
そして、もっと大きな疑問が生まれました。
なぜ今、「共感」がこれほど重要になったのだろう?
昔から、人間には共感する力があったはずです。
なのに、昭和の会社では、
「管理職に必要なのは共感力です」
なんて、今ほど言われなかった。
ところが現在は違います。
心理的安全性が重要だと言われる。
部下との1on1が行われる。
女性活躍が進む。
育児をする男性も増える。
介護をしながら働く人もいる。
年齢、性別、国籍、雇用形態、働く場所、キャリア観、人生観――。
職場にいる人たちが、どんどん多様になった。
「俺もそうだった」
「普通はこうする」
「会社員なら当然だ」
では、人をマネジメントできなくなってきたのです。
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「みんな同じ」が崩れた
私は、ここに大きな転換点があるのではないかと思っています。
昭和の会社は、良くも悪くも同質性が高かった。
特に日本企業は長い間、男性中心の社会でした。
ところが女性が職場に進出し、女性活躍が経営課題になる。
家庭も変わる。
夫は会社、妻は家庭という役割分担から、共働きへ。
「イクメン」という言葉まで登場し、男性も育児や家事に関わるようになる。
会社でも家庭でも、
自分とは違う価値観を持つ人と向き合わなければならない時代
になった。
だからこそ、
相手の話を聴く。
相手を受け止める。
相手の立場から理解しようとする。
ことの価値が、以前とは比較にならないほど高くなったのではないでしょうか。
⸻
私自身も「人の育て方」を変えてきた
私は長く人財育成に関わってきました。
コーチングも学び、研修も実施しました。
そこで重視したのが、
傾聴・質問・承認。
しかし、その後、私はカウンセリングについても学ぶようになります。
そこで改めて重要だと感じたのが、
傾聴・受容・共感。
似ているようですが、同じではありません。
そして人を育てる現場で経験を重ねるほど、
これからの課長には、コーチングだけではなく、カウンセリング的な力も必要なのではないか
と考えるようになりました。
さらに私は、研修そのものについても大きく考え方を変えることになります。
かつて実施していたコーチング研修。
そして、40代以上から退職間近までのミドル世代を対象に考えたモチベーション研修。
私はやがて、
「そもそも、人のモチベーションを上げようという発想でいいのだろうか?」
と考えるようになります。
そこから1年間研究し、「一過性のモチベーション向上」ではなく、自己効力感・未来志向・相互支援を軸とする研修へと方向を変えていきました。 【一般事例】ミドル世代向けパワーアップ研修.pptx
それが、
「パワーアップ研修」
へとつながっていきます。
⸻
この連載で考えてみたいこと
なぜ、昔はそれほど語られなかった「共感」が、これほど重要になったのか。
女性活躍や価値観の多様化は、会社をどう変えたのか。
なぜ管理職教育は、ティーチング中心からコーチングへ、そしてカウンセリング的な考え方まで必要とするようになったのか。
心理的安全性やハラスメントの問題は、その変化とどうつながっているのか。
そして私はなぜ、モチベーションを上げようとする研修をやめ、「強制しない――自分から動く」研修へたどり着いたのか。 当時の資料にも、その思想ははっきり残っています。 【一般事例】ミドル世代向けパワーアップ研修.pptx
この連載では、社会の変化を追いながら、私自身の失敗や人財育成の経験も交えて考えてみたいと思います。
なぜなら私は、
「共感が大切です」と最初から分かっていた人間ではないからです。
むしろ、その正反対だった(笑)。
だからこそ今、
受容・共感・傾聴
の大切さを、誰よりも実感しています。
次回は、まず時計を少し巻き戻します。
なぜ昭和の会社では、「共感」が今ほど必要とされなかったのか。
社会と会社がどう変わってきたのか――。
そこから始めてみたいと思います。
https://note.com/bostonmio/n/n22576b27c2eb
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人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
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