ペルソナを持った「適格見込み客リスト」ができたら、次はお客様のニーズやウォンツを探る段階です。ここで大事なのは、仮説を立てて反応を見ること。私はこれを「仮説ニーズ」「仮説ウォンツ」と呼んでいます。仮説を投げることで、お客様のレベルも、自分の立ち位置もはっきり見えてきます。
融商品は情緒的価値をつけにくい商品です。どれだけ数字で説明しても、なかなかお客様の心には響きません。例えば、100万円を金利3%で預ければ利息は3万円、6%の金融商品でも6万円です。「それなら3%で銀行に預けるほうが安心だ」と言われてしまいます。たしかに銀行に金利3%で置くほうが安心感を持つことができるかもしれません。私はこの壁に1年間悩み、あるとき発想を変えて考えてみました。大口定期は預け入れ金額によって利率が異なります。100万円の預け入れで利息3万円だから、利率の差はたいした違いではないと思われてしまう。しかし1億円預けていれば、金利3%で300万円、6%で600万円になります。そこでお客様に、その金利差300万円でヨーロッパ・エーゲ海をめぐる2週間の船旅ができると伝えてみたのです。これで状況は変わりました。
それと同じで、「今回のハードディスクは秒間転送量が100から250になりました」と言われても、数字だけではピンときません。「何がどれくらい速くなるのか」という実感が伴わないからです。カメラの場合、画素数を数値で語られても、「どんな写真が撮れるのか」が想像できなければ心は動きません。金利差3%はいらなくても、無料でヨーロッパの船旅ができるとなれば、人は動きやすくなります。「欲しいの想起」とは、数字ではなく「欲しい」という感情が購買を動かすということです。
プロセス価値が高くなれば、売上は伸びる
提供する価値は商品やソリューションの価値だけではありません。お客様の「買うまでの体験」そのものも重要な価値のひとつです。
「あなたが顧客に提供している価値とは何か、結果価値がすべてではない」でもお伝えしたように、顧客価値には二つの価値があります。一つは「結果価値」で、購入した商品やサービスそのものがもたらす成果や効果。もう一つは「プロセス価値」で、商品を手に入れるまでの過程や購入後のアフターサービスなどを通じて生まれる価値を言います。
結果価値はほとんど変わらないものなので、営業4.0では、プロセスで価値を提供することがカギになります。ペットボトル1本のお茶であっても、プロセス価値が変わる場合もあります。コンビニで買った場合とお祭りの屋台で店主と会話をしながら買うペットボトルでは、プロセス価値に大きな差が出ます。
プロセスも価値にする、これが営業4.0の力です。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
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