成果を生むための実行力を高めるために、大切な視点があります。それは、習慣から一度はみ出す勇気です。日々の習慣にただ従うのではなく、あえて外れて俯瞰することで見えてくることがあります。アリの世界を例に見ていきましょう。
実行力とは、やり続ける力だけではありません。行動し続ける習慣と、あえて外れてみることで生まれる発想。その両方を持つことで、実行力は次の段階へ進化します。この2つの力を磨き続けることこそが、ビジネスパーソンとしての真の成長につながるのです。
やり方を変える勇気こそ真の実行力
実行力は同じことをやり続ける力と思われがちですが、本質は少し違います。実行し続けるうえで、やり方を変える勇気と環境に合わせて自分を変える柔軟さこそが大切なのです。
たしかにルーティンの仕事や与えられた自分ができる範囲での仕事はやりやすいものです。しかし、それだけでは変わりません。
私は、今までと違うやり方にチャレンジしたい、少しでも良くなりたいという人には、「やったことのないトークを試してください」と伝えています。
私がテレコール営業を始めた頃は、「大変お忙しいところ恐れ入ります。村上と申します」と、いかにも丁寧な言葉遣いで電話をかけていました。ところが、それではまったく成果は出ません。「忙しいんだから電話しないで」と切られてしまう。それで、叱られないようにさらにへりくだり、打率はますます悪化していきました。
そんなある日、「この忙しいときに無礼なやつだな。営業電話なんかしてきやがって」と言われた一言で、ふと気づいたのです。どれだけ丁寧に挨拶しても、営業電話は営業電話。どうせ無礼だと言われるのであれば、思い切って地のままでいってやろうと。この脳のバージョンアップによって、「まいど。社長いる? 2分しかないから急いでつないで」というスタイルに変えたところ、次第につないでもらえる率が良くなっていきました。
私は、コミュニケーションの目的は「心理変容」だと思っています。相手の心理を自分が意図する方向に変えること。目の前の人に「こう思ってほしい」と願うなら、「そう思うよ」と返してもらえるように相手の心を動かします。商品を買ってほしいのであれば、「それが欲しい」と言ってもらえるように、営業は心理変容を促さなければなりません。ただしその前に、自分の心得違いを正す必要があります。まずは自分の心理を変容させて、違う手を打ってみないと分からないのです。
だからこそ、今までのやり方を疑い、思い切って真逆のことを試す勇気も必要です。それこそが真の実行力だと、私は考えます。同じことを、同じトーンで、同じ回数くり返しても、それは実行力とはいえません。実行力とは、「自分のやり方を疑い、変えてみる力」でもあるのです。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
