2025.08.25
なぜ、あの人には人がついていくのか? ― 徳を宿すリーダーがチームに灯すもの ― 共鳴型リーダーシップ2話
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
なぜ、あの人には人がついていくのか? 誰もが経験したことがあるだろう。 どれほど理路整然と話しても、人を動かせない上司がいる一方で、 言葉少なでも、人の心を動かすリーダーがいる。 それは、スキルの差でも知識量でもない。 その人の「人格」が放つ信頼の力が、周囲に伝わっているかどうかである。
これらの資質は、トレーニングだけでは得られない。
日々の選択・態度・対話の積み重ねによって、滲み出る“人間の質”として伝わるものだ。
■心理的安全性と信頼文化は「人格」から生まれる
「心理的安全性」とは、Googleのプロジェクト・アリストテレスでも注目されたキーワードであり、
“自分らしく意見を述べたり、ミスをしても非難されない職場の空気”を指す。
この心理的安全性を担保する最大の要素が、上司の“人格”である。
以下は、心理的安全性が高い職場の特徴と、そこに必要なリーダーの資質をまとめたもの:
職場の状態 リーダーに求められる人格的要素
部下が自由に発言できる 共感・誠実・謙虚
失敗を恐れず挑戦できる 信頼・覚悟・利他性
チーム内で互いに支援し合える 誠実・共感・正義感
組織の心理的安全性は、リーダーの人格の“鏡”である。
どんなに制度を整えても、リーダーが「感情を否定する」「信じない」姿勢であれば、空気は冷えていく。
■社員は「正しさ」ではなく「誠実さ」に共鳴する
多くのマネージャーは、部下に「正しいことを伝えたい」と思っている。
だが現代の部下は、“正しさ”よりも、“その人が本当に誠実か”を見ている。
「私はあなたのことを思って言っている」
という言葉が通じるかどうかは、ふだんの態度がすべてを決める。
部下は“理屈”より“姿勢”に共鳴する。
- 表面だけの言葉には動かない
- 手本を見せるリーダーにはついていく
- 人間的な温かさがある上司には、自分を預けられる
■人格とパフォーマンスの関連:エンゲージメントと成果
Gallup社の調査(2022年)によれば、上司が「誠実・公正・信頼できる」と部下に評価されているチームは、次のような成果を上げていると報告されています:
- 離職率:−59%
- 生産性:+17%
- 顧客満足度:+10%
- 利益率:+21%
これらのデータは、「徳や人格」といった一見あいまいな要素が、実際に組織のハードな成果に直結することを示しています。
また、同調査では次のこともわかっています:
✳︎ 上司との信頼関係が強い部下は、仕事に「意味」や「誇り」を感じている割合が2倍以上。
つまり、人格あるリーダーは、部下にとって「上司」である前に、「人として信じたい存在」であり、その信頼が、部下の内発的動機(自ら燃える力)を育てるのです。
■組織の器とは、「リーダーの器」そのものである
チームや組織の成熟度は、制度や戦略ではなく、リーダー自身の在り方に依存しています。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
