ビジネスパーソンの働く環境は、プールから外洋まであり、外洋で泳ぐ、いわゆるグローバルエリートは、解決策は外にあると考え、外にいる本物の役者たちと対話を重ねていると紹介しましたが、プールで泳いでいる人が外に出て、本物の役者たちに出会い、付き合っていくためには、どのような価値基準を持ち、どのような力を鍛えていけばよいのでしょうか。
私にとってその方は、まさに「目指すべき本物の人」です。そして、そのような人がクライアントの中にもいます。
こうした方々共通するのが、「私欲が小さく、公欲が大きい」という特長です。不思議なもので、その人が今話しているのは、公のためなのか、それとも自分の欲のためなのかということは、何となく伝わってくるものです。
東洋思想に根ざした価値観の時代へ
本物の人に好かれ、一流の人たちの仲間入りを許されるためには、自分自身が成長し続けなければなりません。彼らは皆謙虚で、自分が置かれた環境や仕事、人間関係を心から楽しんでいます。
私は、この「謙虚な姿勢」もグローバルエリートに共通する資質のひとつだと考えます。ビジネスは紳士的な信頼関係がベースにあるべきです。「My word is my bond(自らの言葉が、自らの信頼を生む)」という言葉は、私がアメリカに渡った際に投資銀行のボスが最初に教えてくれたフレーズで、今でも強く印象に残っています。私はこの言葉に、「インベストメントバンカーは発した言葉に責任を持つ」という意味が込められていると感じました。
こうした「謙虚さ」や「お行儀の良さ」は、欧米の合理主義よりも、むしろ東洋思想に深く根ざすものです。私は、こうした東洋的な感覚を持つグローバルエリートこそがこれからの時代を築いていくと考えています。
情報化社会とは「コネクティブ社会」であり、理性的なベクトルを合わせることができなければ、たとえ接続はされていても真のつながりは生まれません。だからこそ私たちは、「気持ちのよい人」と付き合いたいと感じるのです。そういった気持ちの良さや、社会にどのような影響をもたらしたいかというベクトルが合致するかどうかが関係構築の鍵となります。
今後、テクノロジーがさらに進化し、AIアバターの活用が本格化すれば、人と人との関係構築のあり方も、より自由で創造的なものへと変わっていくでしょう。例えば、私のAIアバターが「18歳の高校生」という外見で登場し、私の考えや言葉を発信するとします。そうすると、そのアバターを通じて実際の18歳の若者と出会い、コラボして、新しいビジネスが始まるかもしれません。そこには年齢や立場を超えた、真のコラボレーションが成立する可能性があります。それがどんなキャラクターであっても、アバターを使えば身体情報に左右されることはありません。つまり、「誰が言っているか」ではなく、「何を言っているか」「どんな意志で発しているか」がますます重要になる時代がすぐそこまで来ています。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
