出直し兵庫県知事選挙で当選した斎藤元彦知事の選挙戦において、SNSを駆使して当選への道を作ったと主張するPR会社社長。孤立無援、敵だらけの環境にいた斉藤氏を、大逆転で当選に至らせたそのPR効果は、公選法違反の疑いなど大きな問題があるものの、ここまでの成果が出たことで「PRとしてはすごい」という意見が見られます。しかしこの評価は間違っています。
・キラキラアピールからフクロ叩きへ
斉藤氏の知事選挙PRをしたと主張したことで、自身だけでなく斉藤知事まで公職選挙法に抵触する恐れなどで大批判を集める兵庫県のPR会社社長ですが、慶応大学卒で外銀勤務を経て起業。フランスのグランゼコール(修了などステータスは不明)留学など、正にキラキラプロフィールの女性です。
その社長自身のインスタでは、高価なブランド品をアピールしたり、マスコミからの自身への取材などPR実績より自分自身のPRがぎっしり。この事件がなければそこまで注目はされなかったかも知れませんが、今となってはこうしたキラキラアピールの詰め合わせのような情報発信は、反発を呼ぶ危険な匂いを漂わせています。女性だから批判されるというよりは、可燃性の高いアピールであふれている自らの情報発信が批判の原因と考えるべきでしょう。一緒くたにするのは失礼かも知れませんが、トラブルを起こす商法の主催者が、男女問わず著名人との付き合いや高価なブランド品、クルマなどをSNSでアピールするのと似た印象をも持ってしまいかねない雰囲気です。
しかし今回の事件によって、こうした華やかな日常はすべて批判を招くだけの対象になってしまいました。あれだけの大衆を動かしたPRを統括したにも関わらず、この辺りの反発の可能性については無防備だったのでしょうか。斉藤知事の逆転勝利、その計画から実行まで克明に綴られたnoteのオリジナルは、既に修正されています。それどころか疑惑をぶつけられた斉藤知事は、その代理人弁護士から、PR戦略どころかあくまでポスター印刷を頼んだだけであり、(法律違反の)PRなど依頼していないと、きっぱり全否定されてしまいました。ただのポスター印刷業者であるというのが、斉藤知事側の見解のようです。
・「でもPRの効果はホンモノ」なのか?
斉藤知事再選においてSNSがとてつもないパワーを発揮し、従来の投票行動とは異なる動きが起き、選挙前の予想を裏切る結果となったことは誰もが認めています。ではそれはPRのおかげなのでしょうか?
知事選挙では、元N党代表の立花氏が斉藤氏を支援するため立候補したと述べています。実際に立花氏はSNSや動画などで、斉藤氏を大きくバックアップする内容を上げています。誰のどんな行動が斉藤氏を再選に導いたか、正確な原因を特定することはできないでしょう。マーケティングや広告の世界では「アレオレ詐欺」などとも言われ、大ヒットの裏には自分の役割があったからだとアピールする人が昔からいますが、真偽はどうにも判断できないことから、そうした「アレオレ」アピールは批判的に受け取られることが多いのです。
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2015.07.10
2015.07.24
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。