戦略的サプライヤマネジメントのすゝめーその1-

画像: 写真AC Arceさん

2023.04.19

経営・マネジメント

戦略的サプライヤマネジメントのすゝめーその1-

野町 直弘
調達購買コンサルタント

調達購買部門の主要な役割・機能は「サプライヤとの関係性づくり」です。 これを従来、サプライヤマネジメントと呼んでいました。 一方昨今の環境変化により、より戦略的な取組みである「戦略的サプライヤマネジメント」が求められるようになりました。 ここでは2回にわたって「戦略的サプライヤマネジメント」の説明をしていきます。

評価と関係性(姿勢)の2軸で戦略を策定し、具体的な施策へ落とし込んでいくことですが、姿勢(関係性が強く)が高いが評価が低いサプライヤに対しては、評価内容をフィードバック
し、評価を高め、継続的に評価状況をレビューしていく施策につなげます。一方で、評価は高いが、姿勢(関係性)が低いサプライヤに対しては関係性強化の為の施策をうっていかなければなりません。

こういう一連のマネジメントの仕組みによって、サプライヤ戦略を実現し、ひいてはQCDの改善を図っていくのが、サプライヤマネジメントです。

従来のサプライヤマネジメントは、このように進めるものですが、そこには課題もありました。どちらかというとバイヤー企業がサプライヤをマネイジするという上から目線の取組みで
あること、会社としての取組みになっている企業はあまり多くなく、調達購買部門やバイヤー個人としての取組みであったこと、などです。特にサプライヤ評価の情報は各事業や各工場別の評価であり、全社としての情報収集、活用ができている企業は少数だったと言えます。

最近、企業をを取り巻く環境が大きく変わってきたのです。まずは、一昨年の春くらいから始まった供給不足、サプライチェーン分断、地政学リスクの顕在化などです。

コロナ後の需要増で生産キャパ不足、ウクライナ問題などの地政学リスクの顕在化、コロナによるロックダウンによる物流、生産の途絶など、これらの事案によって、重要なサプライヤを
特定し、供給を切らさないような関係性の構築、場合によっては在庫を持つ、長期発注を行う、などの手立てが必要になってきたのです。

また、構造的には、特に日本企業に言えることですが、川上サプライヤが相対的に力を持つようになってきました。特に、ハイテク業界などでは、製品メーカーよりもEMSや部品メーカーが力を持つようになっています。こういう力関係の変化の中、サプライヤが売り先を選択するような時代になりつつあります。

次は、サプライヤの事業目的や価値観の変化です。カーボンニュートラルやSDG's、ESG投資、人権DDなどの取組みに代表された価値観の転換が進んでいます。同時に相対的に力を持ち始めた川上側のサプライヤが、自らの価値観にあった顧客を選別する時代になってきているのです。

今までは生産計画や技術情報の共有などは多くのバイヤー企業からサプライヤに対して行われていましたが、今後はパーパスやビジョンの共有まで広がり、パーパスを共有できない顧客への販売は行わない、といった状況もでてきています。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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