尼崎USB事件や山口誤振込事件の責任追求の方法

2022.06.29

組織・人材

尼崎USB事件や山口誤振込事件の責任追求の方法

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

誰もがミスを起こそうとしてミスするのではありません。ついうっかり、こんなはずじゃ、という思い違いなど、予想しない中でミスは起こります。頻発する大企業大組織のミス。危機管理の視点でミス対策を語ります。

・危機対応の最大の敵「あってはならない」
危機は必ず起こるもの。これこそが危機対応の大原則です。しかし日本人は根性論が大好き。

なのでこのような事態では必ず;
「(危機は)あってはならない」「起こってはいけないことが起こってしまった」と、要するに危機対応をしていなかったと、自ら認めるコメントが発せられます。

山口県の町役場で、恐ろしいほどの危機管理の欠如によって引き起こされた誤送金事件。こんな大事件に続いてまたまた起きたのが尼崎市の情報処理を請負った大企業が業務を下請けに丸投げし、その下請けがさらに下請け・・・結局作業をしていた最下請会社の担当者であるらしいという事件。

責任はどこにあるのでしょうか。

・トラブルの責任とコスト
すべてトップにあります。これは揺るぎない事実であり、この責任の所在を日本風にウヤムヤにすることで、次の危機への対応の機会をつぶしているのです。トラブルがあればそれをしっかり分析し、原因究明から対応策まで取れれば、トラブルは黄金の教訓として次の機会に生きるのです。

危機管理において、責任者が責任を取ることは絶対に欠かせません。
「そんなことまでいちいち経営者は預かり知らぬこと」で済ませた結果が、尼崎市USB事件のようなお粗末すぎる情報漏洩事件になってしまったといえます。
トップの進退が懸かった重大な責務を、いつの間にか危機感覚が麻痺した結果、トップ進退まで影響があるリスクを忘れてしまったことこそが責任です。

また「そんな情報管理にコストをさらにかけられない」というコストを理由とする言い訳もあります。
だから、その危機対応リスクを含めてコストなのです。
それを負えないのであれば、「危機は絶対起こらない」という妄言に基づいたコスト算定しかしていなかったことを証明していることになります。

クライアント情報を管理することは当然として、今回の事件のようにそれが一度漏洩した場合の計り知れない損害・被害を計算できていなかったとしかいえないでしょう。

・究極の危機負担は原発
究極のコスト負担は原発です。東日本震災が起こるまで、私も原発が最も効率的電力源であるとの宣伝を信じていました。電力不足対応が必要なことに何も異議はありませんが、原発事故時の激烈なコスト負担はなぜ無かったことになっているのでしょうか。

気合いがあれば原発事故は二度と起きないのでしょうか?

原子力発電という科学の粋を集めた技術が、気合いで管理されるとしか思えない現状には大いに疑問を覚えます。原発に反対なのではなく、その危機管理コスト含めた発電コスト計算について、誰も触れないことに疑問だといっています。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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