企業結合会計が変わる:日本のM&A会計はどうなるのか(2)

2008.03.28

経営・マネジメント

企業結合会計が変わる:日本のM&A会計はどうなるのか(2)

野口 由美子

日本の企業結合に関する会計基準の改訂が現在検討されています。日本の会計基準は国際会計基準との共通化に向けて改訂作業を加速させていますが、日本の会計基準はどのように変わっていくのでしょうか。そして統合を目指している国際会計基準とは何なのか、企業結合会計を読み解きながら考えていきます。

本サイトへの投稿記事は
aegif blog(http://aegif.typepad.jp/)より引用しております。

前回は、国際会計基準との差異を解消するため日本の企業結合会計を改訂する検討がなされていることをご紹介しました。それでは、日本が共通化を目指す国際会計基準では企業結合会計をどのように定めているのでしょうか。

国際会計基準はさらに先を行く
実は持分プーリング法を廃止するよりもっと先の「進んだ」会計処理が定められています。国際会計基準は米国会計基準との共通化プロジェクトのひとつとして企業結合に関する会計基準を改訂したばかりです。

ここで「進んだ」という表現を使ったのは従来採用されてこなかったような考え方に基づいた会計処理が採用されるようになったからです。それでは今年の1月に改訂された国際会計基準での企業結合会計を見ていきます。

国際会計基準審議会(IASB)から今年の1月に公表されたIAS 27「企業結合」、IFRS 3「連結及び個別財務諸表」の主な改訂点は以下のようなものです。
・ 少数株主持分に対するのれんの処理
・ 支配継続時の持分変動の処理
・ 段階取得の処理
・ 偶発事象の評価
・ 取引費用の処理

これらの改訂内容について、IASBから公表されている資料を見ていると、従来の考え方を大きく変更するものではないという説明がなされています。しかし、実際には経済的単一体説による処理が定められており、従来の親会社説によっていた連結財務諸表の基礎概念が変更されたことになります。

親会社説VS経済的単一体説
親会社説というのは連結財務諸表の作成目的は親会社の株主のためと考えます。それに対して、経済的単一体説では親会社株主だけでなく、少数株主も含めた企業集団のためであると考えます。この考え方の違いにより、今回の改訂内容にもある少数株主持分に対するのれんと支配継続時の持分変動の処理の仕方が異なることになります。

親会社説ではあくまでも親会社株主の視点に立つので他の企業を取得した場合のれんは親会社株主の持分についてのみ認識します。一方、経済的単一体説によれば親会社株主と少数株主を区別しないので親会社株主の持分だけでなく少数株主持分も含めたのれん全部を認識することになります。

支配継続時の持分変動の処理については、親会社説では資本取引としてしょりすることになりますが、経済的単一体説では損益取引となります。

全部のれん説の採用
今回の改訂ではこの全部のれん説による処理が選択適用できることになりました。全部のれん説を採用した理由は、支配を獲得すると取得企業は持分の割合にかかわらず被取得企業の資産、負債、経営活動の全てに責任があると考えられるからです。

親会社の支配が継続している状況で持分が変動した場合の処理もこの二つの考え方の違いにより処理が変わってきます。親会社説では少数株主は外部のものであると考えるので少数株主に持分を売買した場合、損益取引となります。しかし、経済的単一体説では少数株主との取引も株主と親会社との取引と考えますので資本取引となります。

このような改訂内容を見てどのように思われたでしょうか。日本では現在親会社説が採用されていますので、私たちの感覚とは大きく違うという印象をもたれる方も多いのではないでしょうか。

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