美大生という選択肢(その1) 謎の暗黒大陸、美大生キャリアの実態

2021.12.08

組織・人材

美大生という選択肢(その1) 謎の暗黒大陸、美大生キャリアの実態

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

世間の人は美大生にどんなイメージを持っているでしょうか?芸術に何の素養も持たない私ですが、秋田県にある秋田公立美術大学において、美大生のキャリア教育を担当してきました。 結論から言えば、美大生は一般企業にも大いにお薦めできる隠れた人材です、その理由は・・・(大学を代表する立場でも何でもないので、あくまで個人の感想です)

・美大という暗黒大陸上陸
美大生と言えば、世捨て人のような服装で日々退廃的な暮らしをしたり、昭和のヒッピーをイメージする大人もいるかも知れません。現代アートの高騰で、作品がとんでもない値段で取引される作家もいる一方、昔は「売れない芸術家」や売れない音楽家はダメ人間の象徴でした。しかし実際の美大はそんな変人の居場所とは違いました。

美大=絵という貧困なイメージしかない私でしたが、実際には現代アート的ないかにも芸術的な創作だけでなく、金属やガラス、木などさまざまな素材による造形、伝統工芸、インダストリアルデザインに近いさまざまな作品作りという、かなり「普通な」印象です。普通と言っても私が普段いる総合大学と雰囲気がほとんど変わらないという意味で(私の回りも理工系の博士学生ばかりなので、あまり普通ではないかも)キャンパス内や回廊にも塑像があるなど、おしゃれな空間ではあるものの、ごく普通の大学生たちです。美術系の場合、女子学生比率が高いので、秋美も女子の割合がかなり多い印象です。しかし学生はものすごいぶっ飛んだファッションでもなく、ごく普通の子たちです。

あ、先生の中にはいかにもクリエイターっぽい方が見えますね。といっても広告代理店のクリエイティブの方みたい。
理工系教員の変わった方よりマトモかも。どうやらそこまで暗黒大陸でも魔人の巣窟でもなさそうです。

・美大生の進路の8割以上は・・・
これは美大でも差があるかと思いますが、秋田美大の場合、少なくとも私がキャリア講座を担当していた数年前までは、1学年約百人の内、約8割近くが会社員となりました。事務系やIT系、販売系など職務は様々ですが、中堅大学の進路を大きく差があるとはいえない、普通の企業に就職しています。

そもそもまともな大学であれば就職率100%はあり得ません。旧帝大など上位校ですら、大学院進学や退学などもあり、100%就職することはないのです。ということからすれば、8割近くは会社員に進むという秋田美大の進路はきわめて健全なものといえます。

会社に就職した場合、デザインのような専門イメージそのままの職に就くだけでなく、昨今はゲーム業界などIT能力だけでなく作画能力が必要な職務でも強みを発揮しています。ITやゲームは、日本の経済界でも優等生な業界なので、進路として期待が持てますね。ただしキャリアの授業でも注意喚起をしていますが、デザイン系クリエイティブ系業務の中には法人になっていない自営的な事務所や、社員ではなく独立業者として請負い形態で仕事をするなど、いろいろ複雑な就業形態があるので、労働法に疎い学生はちゃんと契約を理解するよう促しています。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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