ハラスメント専門家から見たリモハラの境界線

2021.05.26

組織・人材

ハラスメント専門家から見たリモハラの境界線

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

もはやニューノーマルの代名詞ともなったリモートワーク。一方で社員と管理職間では新たなハラスメント論争「リモハラ」問題も起こっています。超大手官公庁や企業、中小零細サービス業界まで、危機管理の専門家としてハラスメント防止の伝道をしている筆者が解説します。

4.リモハラの境界線
上記「2.」の事象もこの業務性の視点で明確に区分できます。

①と②
頻繁な作業進捗監視が「必要な」業務なら適正ですが、それは生産ラインのように、ミスがあれば危険も生じるなどの必要性がある場合です。リモートワークの事務仕事において、四六時中監視が必要な合理性は通常考えられません。単に上司がヒマでやることがないのか、業務成果を判断する管理能力が無いかのどちらかの可能性が高いでしょう。社長に常時カメラONでなければならない合理的理由を説明できるでしょうか。

③と④
業務上の指示はハラスメントではありません。では私室や私服は業務とどう関係するのでしょうか。インテリアやアパレルなどの業務で、私室や私服のセンスが業務上欠かせないなどあるのであれば合理性があるかも知れませんが、ちょっと現実的にあり得ない気がします。業務上の必要性がないものであれば、ハラスメントになる可能性がきわめて高いでしょう。

⑤と⑥
まあどう見ても単なるセクハラ以外にないでしょう。業務上の必要性があるとは考えられないし、そもそも業務時間外の飲食強要は完全にハラスメントになります。

5.ハラスメント問題の責任は誰?
考えてみれば、いずれもリアルな職場であればここまで注目されないか、そもそもそんな行為がなかったものが、リモートという新たな環境であぶり出されたと言えるでしょう。

ただ、上司・管理者のほとんどの方は、上記のようなハラスメントの認識を持たずに行為に及んでいるはずです。ちょっとした会話のきっかけ、冗談、軽口の一環という程度ということです。

私が本格的に顧問先で聞き取りしたケースで、ハラスメントの意図があったことを認めた人は一人もいません。
ハラスメント対応は道徳が目的ではなく、企業組織のリスク管理です。

「そんな意図はなかった」が通じないため、数々のハラスメント問題が起こっています。ハラスメント対策は絶対に、職場現場では解決できません。経営者、経営管理部門の責任であり、専権事項なのです。

特に社長は一義的にハラスメント問題の責任を負い、発生すればその被害を直接受ける立場であることをぜひ自覚していただきたいと思います。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

フォロー フォローして増沢 隆太の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。