「高齢者は、転居によるストレスが大きい」は、単なる神話。

画像: Jun K

2021.05.14

ライフ・ソーシャル

「高齢者は、転居によるストレスが大きい」は、単なる神話。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

気を付けなければならないのは、むしろ、現役時代の家に無理をして住み続けることによるダメージではないか。

これらを満たす環境に転居すればいいし、今の高齢者には新しい環境への適応力もあります。ところが「高齢者はリロケーション・ダメージを受けやすい」という“神話”を信じて現役時代の家に住み続けることによって、かえって、家の中での事故や不便・不安・孤独といったダメージを受けてしまう人がいます。

実際、消費者庁が集計したデータによると、2018年の高齢者の家庭内事故による死者数は「転倒・転落」が約8800人、「不慮の窒息」は約8000人、(ヒートショックなどをきっかけとした)「不慮の溺死および溺水」が約7100人で、交通事故で亡くなった約2600人をいずれも大きく上回りました。

現役時代の家に住み続け、だんだんと人との交流や会話が減っていって楽しみもなくなり、孤立感を覚えるようになる人も多くいます。最も避けるべきはこのような「住み続けダメージ」の結果、心身が早く衰えて自立生活が難しくなり、適応力が落ちた状態になってから転居することで、より大きなリロケーション・ダメージを受けてしまうケースでしょう。

昔と今の大きな違いを踏まえれば、リロケーション・ダメージは単なる神話です。環境変化への適応力が高い、高齢期の早い時期に住み替えれば、リロケーション・ダメージをなくすことも十分可能です。高齢の親の状況について心配している子ども世代の皆さんも、この点は理解しておくべきでしょう。


NPO法人「老いの工学研究所」

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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