キリスト教はローマ帝国に迫害されたか(2)

2020.09.30

開発秘話

キリスト教はローマ帝国に迫害されたか(2)

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/キリスト教はローマ帝国の皇帝崇拝と多神教を拒否して迫害された、と答えることになっている。しかし、迫害ばかりされていたら、大帝国を乗っ取るほど教勢が伸びるわけがあるまい。/

J アンブロジウスは、もう帝国を見捨て、教会をはしごにして権力を握ろうということかな。

ニカイア派のミラノ司教となったアンブロジウスは、教会政治家として辣腕を発揮し、380年、テオドシウス一世東帝らに、信教の自由を許していたミラノ勅令に代えて、三位一体のニカイア派を唯一絶対とするテサロニケ勅令を発させ、アリウス派はもちろん、ユダヤ教やミトラ教、マニ教、さらには伝統の神々への信仰までも排除していきます。

これとともに、キリスト教聖職者が扇動し、信徒がユダヤ人のシナゴーグを襲撃して、略奪放火する事件が各地で起こってきます。これに対し、テオドシウス一世東帝は、シナゴーグの再建と略奪放火犯の処罰を命じますが、ミラノ司教アンブロジウスは、そんな事件はすべてユダヤ人のデマだ、と言って、帝命を止めてしまいます。また、390年のテサロニケ暴動鎮圧で七千人の死者を出すと、ミラノ司教アンブロジウスはテオドシウス一世東帝を破門。これを懺悔させることで、教会が皇帝より優位であることを示します。

J ようするに、元老院や軍隊に代わって合同教会や修道院が皇帝を左右するようになったということですね。いや、ヘレニズムから生まれたキリスト教がローマニズムに染め変えられたということかな。それにしても、イエスの教えとはずいぶん離れたものですねぇ。

では、きょうのまとめです。ローマは、陰謀が渦巻き、心の美徳と手の汚れの欺瞞に、罪を問うキリスト教が浸透。グノースティシズムや、終末論が再燃。でも、ダキア征服でもたらされた財で、ローマは最盛期を迎え、東方政策の都合でユダヤと和解。そのせいで、キリスト教は圧迫され、西方合同派が成立。四散分裂した帝国統一のために皇帝がキリスト教を利用し、逆にキリスト教が皇帝を支配することに。今回は、こんなところかな。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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