米中貿易摩擦の動向と投資家心理

2019.06.03

経営・マネジメント

米中貿易摩擦の動向と投資家心理

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米中貿易摩擦が過熱化してきており、その解決の糸口が見つからないように思えます。

米中貿易戦争は次世代通信技術が主戦場に

これまでの双方の関税の掛け合い具合を纏めてみると、次のようになります。米国がこれまでの第三弾までで総額2,500億ドルの中国からの輸入品に対して追加関税を課し、中国が同様に米国からの輸入品総額1,100億ドルに対して第三弾までで追加関税を課しています。
そして今月約3,000億ドルの中国製品に対して最大25%の関税を課す計画を表明しました。対象製品には携帯電話、パソコン、玩具、衣服など、米国民の市民生活に大きく影響を与えるものが多いというのが特徴です。
そして中国は報復関税としてこれまでに課した約600億ドル相当の米国製品の関税率を5~25%に引き上げると発表しました。米国側の根底に流れる最大の懸念は5G次世代通信において、米国の優位の覇権が中国に取られてしまうということです。
中国は「製造業2025」をスローガンに、2025年には技術において世界最高水準を目指していて、中国政府は巨額の補助金を企業に投下しています。

互いに弱みを探る状況続く

知的財産権問題も根底に流れていて、アメリカはファーウェイ製品に対する警戒を同盟国に協力を求め、排除する動きを見せました。中国は国家資本主義のもと、共産党政権主導で、先端技術の開発を進めていますが、米国は自由主義経済の原則のもと先端技術の開発を進めています。
双方の考えの違いは容易に埋められるものではなく、水と油の関係。先週末日米首脳会談で安倍首相との少人数会合でトランプ大統領は、「中国は困った。全然言うことを聞かない。」と発言し、本音をほのめかしていました。
米国、中国共に、相手の弱みを探る動きがみえます。中国はレアアース輸出制限、米国債売却を検討し、米国は人権問題、環境問題を真剣に取り上げることを検討しているのではないかと思います。
筆者を含め、多くの市場関係者は、これでは解決は相当に長引くのではないかと考えはじめているのではと思います。米国が唯一の大国として君臨し、その他の国の追随を許さないトランプ大統領の姿勢には、白人中間層の支持が強く、一貫しているように思います。

米中のにらみ合いは長引く見込み

このために米株式市場、そして長短金利市場では悲観論が強いのではと思います。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は過去3年間の米国株価指標ダウ平均の推移を示しています。
去年秋からのトランプ大統領の対中貿易制裁の影響がチャートに如実に表れています。グラフでは約26,500ドルの上値レジスタンスと、約22,500ドルの下値サポートのレンジ取引が年初から続いているようにも見えます。
対中貿易関係が改善しない限り、米企業は大きく業績を伸ばせないと投資家は確信しているのではないかと思います。中国企業は世界中の国(日本を含めた)から部品を輸入し組み立て製品にして、それを世界中、とりわけ米国に輸出する貿易構造となっています。世界中にサプライチェーンを張り巡らしているので、グローバル経済、米国経済に与える貿易摩擦の影響は計り知れません。
ダウ平均の停滞は、この事実を意識した米国投資家の心理状態を反映しているようです。このレンジで留まる範囲内に収まればよいのですが、矢印で示した下方向に振れると、世界の投資家は総悲観的になってしまうのではと筆者は懸念しています。
その解決には、米中が歩み寄り、落とし所を見つけることに努力しないといけないのですが、理念が異なること、習近平国家主席の中国の偉大な復興にかける意気込みから、その解決には双方の相当な努力と時間が必要と思われます。

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