いま世界中の観光地が直面する「オーバーツーリズム」の危機《Part.2》

2019.03.25

ライフ・ソーシャル

いま世界中の観光地が直面する「オーバーツーリズム」の危機《Part.2》

LEADERS online
南青山リーダーズ株式会社

世界的な「旅ブーム」が拡大する近年、インバウンドが急増する国内外の観光地では、増えすぎた観光客によってさまざまな弊害が生じる「オーバーツーリズム」問題が深刻化している。 前回の「いま世界中の観光地が直面するオーバーツーリズムの危機《Part.1》」では、オーバーツーリズムの危機的状況に瀕する海外の人気観光地の事例を取り上げたが、もはやこれは対岸の火事ではない。 今回の《Part2.》では、日本の観光地にも広がりつつあるオーバーツーリズム問題の事例とともに、持続可能な観光産業のあり方について考察する。

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

大自然の中を走る北海道の直線道路

日本を代表する観光地・京都が直面する深刻な事態

国内外から年間5000万人以上の観光客が訪れる京都でも、オーバーツーリズムによるさまざまな問題が顕在化してきている。とくに深刻なのが「バス問題」だ。

京都市内のあちこちで、もうすっかりおなじみの光景となってしまった「バス停前の長い行列」。平日でも1~2台待たないと乗車できず、桜や紅葉のハイシーズンには、街の渋滞も重なってバスが動かなくなる事態もたびたび発生。地元住民からは「バスに乗れない」との苦情が相次いでいるという。
市が実施した観光満足度調査(2017年)の残念度部門でも、日本人では「人が多い、バスの混雑」がトップ。外国人の回答でも「バスが満員で乗れなかった」という残念度が2位となり、その割合も前年の9.5%から14.2%と急増している。

こうした事態を受けて、京都市の門川大作市長は「分散」をキーワードにした取り組みを推進し、オーバーツーリズムに対応するモデルケースとして注目されている。その狙いは、観光客の量を制限するのではなく、その量を散らばらせること。
具体的には「時間」「場所」「季節」の3つの集中を分散させ、「混んでいる時間や時期に、混んでいる場所に行く」という観光客の動線を変えることで、混雑・渋滞などの問題を解消していきたいとしている。

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

多くの観光客が行き交う京都の街

京都市が取り組む「時間・場所・季節」の分散対策

では、この「3つの分散」を図るために、京都市が2018年から実施している主な対策事例を紹介しよう。

【時間の分散】
京都を代表する世界遺産・二条城では、2018年夏季の開門時間を例年より1時間早い8時に繰り上げるとともに、通常は非公開の「香雲亭」で予約制の特別朝食を提供。昼間の来城者を朝にシフトさせ、観光客の分散を図った。朝に訪れた観光客からは、「早い時間は人が少なくて、ゆっくり見学できた」「由緒ある場所で朝食も食べられて満足」との声が多く聞かれたという。

【場所の分散】
市内南部の伏見区は、観光客に人気の伏見稲荷大社が混雑スポットだ。ただ、それ以外の場所は比較的すいており、逆に観光客をどう呼び込むかが課題だったという。そこで、地元の商店街や観光組合では、まだ知名度の低い「酒どころ伏見」をアピールするツアーを企画。酒蔵の見学と利き酒がセットになっており、ひと味違う京都体験ができるツアーとして訪日客にも人気という。

次のページ観光を持続可能な産業に「成熟」させるために……

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

LEADERS online

LEADERS online

南青山リーダーズ株式会社

専門家による経営者のための情報サイト

フォロー フォローしてLEADERS onlineの新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。