ZOZOざんまいは採算とれたのか

2019.01.15

組織・人材

ZOZOざんまいは採算とれたのか

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

炎上芸人や炎上タレント、炎上企業と、普通なら忌避する炎上行為を自ら起こす人たちがいます。この年末年始話題となった「ペイペイ」やZOZOタウン・前沢社長の「1億円あげますキャンペーン」、また毎年恒例でマグロ初競り最高値更新をした「すしざんまい」など、その採算を考えましょう。

ZOZO前沢社長の場合、自身のツイッターフォロアー50万人を、500万人を超えるまでに増加させることに成功したという点で、単なる注目以上の成果を上げたとはいえるでしょう。一人100万円という金で釣ってフォロアー増を狙う手法は反発を呼び、キャンペーン終了と同時に数十万単位でのフォロー解除も発生しています。ただこれは当初から当然予見されており、また解除者をはるかに上回る新フォロアーが得られたという点は間違いありません。

経営的に、マーケティング的に重要なことは、こうして目論見通り増えたフォロアー数の価値をどう評価すべきかにあります。つまり結果として話題になった今回の件は、計画段階でその成否は決まっていたのです。この手法に価値が無いというのは、前沢氏がプランを表明した段階で判断されるのべきなのです。そこまでの理解を持たない経営者は価値判断する資格がありません。

私は2つの目的があったと感じています。一つはZOZOの顧客となり得る、こうした話題に飛びつく層の獲得です。批判を含めてネットニュースでは話題性こそもっとも価値を持っています。大仰で意味深なタイトルをつけることは、ネットニュースや記事では何より重要とされます。「中身が良い」かどうかの判断は簡単ではありませんが、タイトルとしてクリックを稼げるかどうかはただちに判別可能です。

つまり前沢氏のような経営観をもって、話題作り含めた広い意味での広報活動という戦略的な目的があるのかどうかこそ、評価の本質なのだといえます。単に「ZOZOが成功したからウチも」というような定見のない姿勢が論外なのはいう間でもありません。それはマーケティングの成否ではなく、経営者の判断がズレているのです。

同じく加入者拡大キャンペーンを行ったPayPayも、一番リーチしたかったノンアクティブな、未利用ユーザーを開拓できたのかどうか、単にニュースで話題となった以上の成果こそが評価の分かれ目です。予定を大幅に上回る早期キャンペーン終了は、単なるチェリーピッカー(特売あらし)への便益供与だけで終わってしまったのではという疑念が残ります。

・炎上マーケティングの致命的欠陥
話題を集めることには間違いなく成功したZOZOタウンやすしざんまいですが、見落とされている欠陥があります。それは「社員の」モチベーションです。億万長者の社長が身銭を切って会社への貢献をして何が悪いのかということですが、それを見ているのは消費者だけではありません。従業員も黙って見ています。いや、世間の一般人以上に自社の活動や広告についての内部者被見率は高いのです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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