「のれんは血よりも濃い」 船橋屋 代表取締役 八代目当主 渡辺雅司 〜老舗ファミリー企業が守る伝統と攻める経営〜

2018.10.24

経営・マネジメント

「のれんは血よりも濃い」 船橋屋 代表取締役 八代目当主 渡辺雅司 〜老舗ファミリー企業が守る伝統と攻める経営〜

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江戸固有の和菓子「くず餅」の製造販売を手がける「船橋屋」は、江戸時代から続く創業211年の老舗企業だ。8代目当主、渡辺雅司氏にくず餅の持つ知られざる魅力と、医療や健康分野への展開計画などについて聞いた。

早川)そういう表現でリーダーシップを語る社長も珍しいですね。若い社員さんが企画する会社説明会が面白いと評判だとお聞きします。

渡辺 こんな老舗企業で下町の和菓子屋なのに、新卒学生が2万人近くもがエントリーしてくれるようになりました。
入社後も個人の能力を引き出す研修や取り組みをしています。
だから、スピード成長する人材が多いですよ。
社員の自主性を促し、志を共有できるよう、さまざまなプロジェクトを立ち上げています。

早川)なにより社員に浸透させたいこととはどんなことでしょうか?

渡辺 一つは文化性です。お客さまのライフスタイルに、船橋屋が物語としてどう入ってきたかということです。
たとえば、この前も104歳で亡くなったお客さまが、生前に「自分のお葬式をくず餅で飾ってほしい」との遺言を残されました。
だから、葬儀にうちの写真とくず餅を送りしました。お客さまは「戦時と戦後の苦しいときに、唯一の楽しみは、亀戸天神の前でくず餅を食べることだった」とおっしゃっていたそうです。
自分が小さい時はおばあちゃんに連れられて、大人になったら子どもや孫を連れてきて、104歳ではひ孫を連れてきて……。
「死んだら閻魔大王にくず餅を持っていくから」ということでしたが、これこそが企業の文化性です。

もう一つは社会性。
なんのために会社が存続するか、社会に対してどんな役割があるかと常に問い続けることです。
自社の利益でなくて、世の中を幸せにするために、何をするかでしょう。
うちで言うなら、食事を通して体に入る有害物質のことには、高い意識を持ってほしいです。

「発酵」で世界の健康に寄与したい

早川)今後、新しい事業構想などあれば教えてください。

渡辺 まずは、これまで通り、伝統を守りながら、発酵の文化を世の中に広げていくことです。
もう一つは革新的な取り組みとして医療とのタイアップです。
くず餅に含まれている乳酸菌でいかに人々の腸を健康にしていくかということです。
いずれ「カラオケ」と同じくらいに、「発酵」を世界のスタンダードにしたい。

「人間は皆、健康でいたい」と思っています。
そこには大きなマーケットがある。

船橋屋のくず餅は、「エセ」のものではなく、212年間、生き残ってきたという証拠がある。

医療向けと一般向けに分けてやりたいですね。
男性は女性に比べて腸内が汚いんです。肉を食べるしビールも飲む。
ここで、くず餅の乳酸菌をジュレタイプにしたら食べやすいですよね。賞味期限も2年程度にしたものを、売り出したいですね。
このほか、歯周病対策としての活用も考えています。
プラークは普通、歯科医院で、抗生物質を使って除去します。
もしかしたら、乳酸菌のジュレを口の中に含んで3ヵ月ぐらい続けると、きれいになるんじゃないかと思っています。
その他にも、水虫薬や化粧品の開発で声がかかっています。

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