2017(平成29)年の厚生労働省の発表によると、待機児童数は全国で2万6081人。“保活”(子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動)にいそしむ子育て世代にとって、保育園探しは切実な問題となっています。 4月のある日、朝日新聞夕刊トップに「保育園付物件、住めば入園保証」という文字が躍りました。記事の内容は、千葉県柏市にある36階建賃貸タワーマンションの3階に、定員70名の認可外保育園がオープンし、入居契約を結んだ住民は先着順で入園できる、というもの。認可保育園の設置基準に準じた人員配置や設備を整えながらも、あえて“認可外”としたのにも理由があります。 今回は“保活”の切り札、保育園付きマンションについて解説します。
公表される待機児童数のカラクリ
小泉純一郎首相(当時)が「待機児童ゼロ」を目指すと宣言した2001(平成13)年の待機児童数は、3万5144人でした(図「待機児童数2001年と2017年の比較」参照)。この数字を前述の2017(平成29)年と単純に比較すると、25%以上の減となり、国の施策が功を奏したように見えます。
しかしこの年、国が待機児童の定義を変えたことを見逃してはなりません。それまでは、保育園に申し込んで入れなかった児童はすべて待機児童として計算していたのですが、これ以降の集計については、自治体が補助する認可外保育施設を利用した場合などは含めなくてもよくなったのです。
ちなみに、同じ2001(平成13)年に発表された、新しい基準での待機児童数は2万1201人。新基準で比較すると、2017(平成29)年は123%となり、待機児童数は減るどころか逆に増加しています。2017年ワーストの世田谷区を例にとると、公表された861人の待機児童に加え、自治体が補助する認可外施設への入園者や、保護者が育児休業中などの“隠れ”待機児童916人を加えると1777人になる計算です(朝日新聞調べ)。
政府が発表する数字とうらはらに「問題はちっとも解決していない」「仕事に復帰できない」という悲鳴や落胆の声が聞こえるのはもっともであり、背景には、こうした数字のマジックがあるのを忘れてはならないでしょう。
保育園付き分譲マンションのはずが……
国の旗振りにもかかわらず待機児童問題はなかなか解決されませんが、“保活”(子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動)にいそしむ層に人気があるのが「保育園併設型の分譲マンション」です。しかし、保育園付き分譲マンションを購入しても、必ずしも入園が保証されるということではありません。大型マンション内に認可保育園を併設している場合、自治体からの助成金を受けているため、入園者を選ぶのは自治体だからです。つまりこうしたケースでは、マンションの中に保育園があっても、必ず住民優先になるとは限らないわけです。
一方、マンション内に設置されている保育園が無認可保育園である場合、分譲当初は高額の保育料を払わなくても、住民優先で入園させてくれます。しかし、保育施設の運営には多額の費用がかかるため、保育園の運営費は、分譲時にマンションを開発したディベロッパーが当初の数年間(多くの場合5年)負担して、保育園運営業者を誘致しているのが実情です。
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