デジタル時代にSTPは古いのか?・「リーン・スタートアップ」の本質

画像: Franklin Heijnen

2022.02.19

IT・WEB

デジタル時代にSTPは古いのか?・「リーン・スタートアップ」の本質

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

現代マーケティングの大家、フィリップ・コトラーが提唱した「STP理論」。すなわち、市場の顧客候補を「同質のニーズ」で括って細分化する=セグメンテーション→その中から、最も魅力的な顧客候補群を抽出するターゲティング。そのターゲットに自社の価値・魅力を示して、競合と差別化を図るポジショニング・・・である。  それが、近頃「もう古い」と言われ始めているのを耳にすることが多くなってきた。果たして本当にそうなのだろうか?

●「完璧を目指すよりまず終わらせろ」

「完璧を目指すよりまず終わらせろ(Done is better than perfect)」。

これは、Facebook社(現Meta)の壁に描かれているという言葉だ。

Facebook社(当時)がIPO(株式公開)した際に、創業者のマーク・ザッカーバーグ氏が投資家へ向けたの手紙で明らかにしたものである。

最初から完璧を目指して開発するのではなく「設計→開発→テスト→改善」のサイクルを短期間で繰り返し、素早くFacebookをより良くていくという意味が込められたものだ。

「設計→開発→テスト→改善」というのは、取り立てて目新しい話ではなく、古くから言われている「PDCA=Plan→Do→Check→Action」と同義であると言っていい。

しかし、この言葉がマーク・ザッカーバーグ氏の名言として取り上げられることが多いのは、昨今のデジタル時代に入ってから、シリコンバレーでスタートアップ企業から大企業まで多くが採用していると言われている「リーン・スタートアップ」という開発手法が、まさにこの「完璧を目指すよりまず終わらせろ」というスタイルのマネジメント手法であるからだ。

●リーン・スタートアップとは?

簡単に言えば、「コスト(手間や時間を含む)をかけずに最低限の製品・サービス・機能を持った試作品を短期間でつくり上げ、上市(もしくはWeb上へ場合によっては無料でアップ)し、顧客の反応を的確に取得し、より満足度が高まるできる製品・サービスにブラッシュアップをする開発を繰り返していくしていくマネジメント手法」のことだ。

リーン・スタートアップは米国の起業家、エリック・リース氏が、コミュニケーションサイトの運営ベンチャーを起業した経験から提唱したものである。

Leanは形容詞で「(筋肉質で)細い, やせた, 引き締まった」という意味が辞書にはある。転じて「無駄を省いた開発手法」を意味するようになった。

先にザッカーバーグ氏の言葉で「設計→開発→テスト→改善」という工程を上げたが、リーン・スタートアップの正確な工程は「①構築→➁計測→③学習→④再構築」とされている。

以下、その内容を簡単に紹介する。

①構築=アイディアや仮設を元に新しい製品・サービスの企画を立案し、なるべくコストと時間をかけずに完璧でなくともよいので形にして、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる実用最小限の製品を開発し、顧客に試してもらう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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