マーケティングとは何かと問われると、言葉に詰まってしまう経営者も多いだろう。会計事務所マーケティングの第一人者として業界をリードする株式会社アックスコンサルティング代表の広瀬元義氏によれば、マーケティングは企業活動に必須のものだという。 自社のみならず業界自体をも盛り上げるマーケティングの手法とは、どのようなものなのか。経営者はどのような姿勢でマーケティングに向き合い、経営に取り組むべきなのか。30年の歴史をもつ組織を率いる広瀬氏に聞いてみた。 (聞き手・仙石実・公認会計士、税理士/構成・株式会社Tokyo Edit 大住奈保子)
(仙石)最近は士業のAI化が話題になっていますが、これについてはどうお考えですか。
(広瀬)数字を読んだり表にまとめたりといった作業は、たしかにAIに取って代わられる可能性が高いでしょう。しかし「判断する」という仕事は、AIにはできないはずです。過去のデータを分析して最適な判断を予測することはできても、それに対して責任をとれるのは人間でしかありえないからです。
意識的に「判断する」業務を伸ばすようにしていけば、士業もAI化の波を恐れる必要はないと思います。
正しいチャレンジには「世の中の流れ」を読む力が必要
(仙石)御社は約30年もの歴史をお持ちですが、事業を継続するために必要なのはどんなことなのでしょうか。
(広瀬)一番重要なのは、全員が責任を分かち合うような企業文化をつくることだと思っています。もちろん、経営陣だけが責任をもって社員はもたないという会社もあるかとは思いますが、アックスコンサルティングはそうではない会社を目指したかった。それでこそみんなでひとつの目標を追いかけていけるし、苦しいときにも目標を忘れずにいられると思うんです。
今は働き方改革が推進されていますが、大事なのは残業や休日出勤を減らすということではない。根本にあるのは、組織としていかに効率的に成果を上げるかということなんです。
そう考えると最終的に勝つのは、給与の額に関わらず、隣の人が困っていたら助ける文化が育っている会社なのではないでしょうか。
確固とした文化や理念の存在自体が、価値あることだとも思います。うまく行っているときは誰だってがんばるんですよ。大事なのは、うまく行かないときにふんばれるかどうか。そういうときに、ブレない企業文化や企業理念をもっている会社は強いと思います。
(仙石)長期的に事業を続ける中では、どんな企業も停滞期を経験するかと思います。停滞期を乗り越えるには、どうすればいいのでしょうか。
(広瀬)リスクを取ってチャレンジし続けることですね。停滞期で不安になると、できるだけリスクを取らずにいようと守りに入りがちです。でもそれは間違いで、そんなときこそ進んでリスクを取っていかなければならないんです。チャレンジを怠れば、そこから衰退がはじまる。これは個人も組織も同じだと思います。
ただし、やみくもにチャレンジすればいいというものでもありません。最初にはしごをかける位置が重要です。
正しい位置にはしごをかけるには、これから世の中がどうなっていくのかを見極めることです。法律はどう変わって、それによってどんな影響が出て、お客様がどこに向かっていくのかを読める力が大事なんです。
それに比べれば、教科書に載っている法律の条文なんて瑣末な知識。資格試験の勉強をしている時点からこういう意識があるかどうかが、独立後の明暗を分けると思います。
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