中高年の熟年夫婦に朗報!配偶者優遇の相続制度を新設へ

2018.02.26

経営・マネジメント

中高年の熟年夫婦に朗報!配偶者優遇の相続制度を新設へ

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相続制度の見直しを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、遺産相続に関する民法改正の要綱案をまとめ、今年(2018年)1月22日からの通常国会に提出しました。 約40年ぶりとなる法制見直しの目的は、高齢化社会における遺産相続のあり方への対応。改正案には故人の配偶者が住まいや生活費を確保しやすくする新制度が盛り込まれるなど、法的に結婚している配偶者の優遇を強く打ち出した内容となっています。加速する高齢化の時代とともに、遺産相続の「何が、どう変わるのか」……気になるポイントを具体的に見ていくことにしましょう。

自宅に住み続けられる「配偶者居住権」を新設

今回の法制改正における柱のひとつが「配偶者居住権」の新設です。
総務省の全国消費実態調査(2014年)によると、2人以上の世帯の家計資産に占める不動産の割合は全国平均で約67%。子どもがいる場合、配偶者の法定相続分は遺産の2分の1となるので、子どもの相続分を捻出するために、住んでいる自宅を売却(自宅を現金化して分割)しなければいけないケースも考えられます。そこで改正案では、住宅の権利を「所有権」と「居住権」の二つに分割。配偶者が居住権を選択すると、子どもや他者が住宅の所有権を持っていても、配偶者はそのまま住み続けられるようになります。
また、居住権の評価額は住宅の評価額よりも低くなるため、配偶者が預貯金などの現金をより多く相続できるケースが増えます(下図参照)。つまり、残された配偶者は住む家を失うことなく、老後の生活費の不安も減るというわけです。

居住権の評価額は配偶者の年齢や平均余命などから算出され、高齢になるほど安くなりますが、配偶者が若い場合は従来の所有権と変わらないほど高額になることも見込まれます。そうした意味で、配偶者居住権は高齢化社会を主軸に見据えた、シニア世代のための優遇制度といえるでしょう。

結婚して20年以上の夫婦に限定した優遇措置も

さらに、中高年の配偶者を優遇する措置として、結婚期間20年以上の夫婦にかぎり、配偶者から生前贈与された自宅は遺産分割の対象(遺産の総額)から除外できる規定も設けられました。こちらも、残された配偶者が住み続けられる家を確保するとともに、預貯金などの現金を得やすくする仕組みとなっています。
現行制度では遺産分割の際、生前贈与された自宅も遺産に含めて計算されるため、贈与を受けた配偶者は預貯金などの取り分が少なくなってしまいます。たとえば、夫の遺産(生前贈与された自宅2000万円+現金3000万円)を妻と子ども1人で相続する場合、妻の法定相続分は遺産の2分の1にあたる2500万円。しかし、妻はすでに自宅2000万円分を贈与されているため、相続できるのは現金500万円だけとなってしまうのです。そこで、生前贈与された自宅の2000万円分は遺産分割の対象外とし、残りの現金3000万円のみを対象とすることで、妻はその2分の1の1500万円を受け取れるというわけです(下図表参照)。

前述したように、この規定の対象は「結婚して20年以上経過した夫婦」と限定されており、夫婦関係の長さを重視している点が最大のポイントです。3組に1組のカップルが離婚する時代、熟年夫婦になるまで長く連れ添った配偶者だからこそ、こうした優遇が受けられるということかもしれませんね。

次のページ時代に即した新規定も追加され、より現実的・合理的な法制へ

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