一世を風靡した「グロソブ」の失速に見る投信市場の今後《Part.1》

2017.11.29

経営・マネジメント

一世を風靡した「グロソブ」の失速に見る投信市場の今後《Part.1》

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南青山リーダーズ株式会社

1997年12月に登場し、毎月分配型投資信託の先駆けとして市場を席巻した「グローバル・ソブリン・オープン」。 略して「グロソブ」と呼ばれる愛称は、投資に興味のある方なら誰でもご存じでしょう。 しかし、長年にわたって投信純資産高トップの座に君臨し、一時は6兆円近くまで資金を集めたグロソブも、いまや純資産総額は6000億円を切り、かつての勢いはすっかり失われてしまったようです。 実は筆者も10年以上前、最盛期のグロソブに投資した経験がありますので(約5年間保有)、最近の低迷ぶりを見聞きすると複雑な心境ではありますが……。一世を風靡(ふうび)したグロソブの歩みとともに、その失速に見る投信のリスクや今後のマーケットについて、2回シリーズで取り上げていきます。

毎月の分配金と安全性の高さが人気のポイントに

世界主要先進国(OECD加盟国)の国債や政府債券など、公的機関が発行するソブリン債を投資対象にした「グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)」は、国際投資で得た利益を毎月一定額ずつ出資者に分配する毎月分配型の投信商品です(3ヵ月・1年決済型もあり)。「A格以上の安定した公的債権に投資するため安全性が高い」とされ、毎月一定額の分配金が必ず出ることから、投資ビギナーや年金暮らしのシニア層にも手の出しやすい入門ファンドとして人気を博しました。

販売当初のグロソブの分配金は1万円あたり60円。100万円投資すれば毎月6000円、年間で7万2000円の分配金を受け取ることができました。2001年以降、この分配金は40円 ⇒ 35円 ⇒ 30円 ⇒ 20円と徐々に減り、2016年8月からは10円に下がりましたが、それでも超低金利の銀行預金(0.001%=100万円預けて1年の利息は10円)と比べると、まだまだお得感はあるのかもしれません。

分配金が出ていても、トータルでマイナスになる可能性が……?

グロソブから広まった毎月分配型投資信託は、月々の分配金が大きな魅力ということで、いま売れ筋の投信商品の半数近くがこのタイプといわれています。ただし「毎月分配金が出ているから大丈夫」と安心して放置するのは禁物です。商品の基準価格(原価)が購入時よりも下がっていたら、投資した元本が目減りして、トータルでマイナスになる(損失が生じる)可能性があるからです。

たとえば、グロソブの販売当初の基準価格は1万円前後でしたが、現在(2017年10月時点)では約5000円にまで下がっています。これを単純計算すると、販売当初に1万円投資した人がいま解約した場合、売却で戻ってくるのは解約手数料を引いて5000円弱。よって、保有期間中の分配金の総額が5000円強に満たなければ、トータルのリターンはマイナスになってしまうのです(グラフ参照)。


ちなみに、筆者がグロソブに投資した時の基準価格は約8000円で、1万円あたりの分配金は40円。それから約5年後に解約した時の基準価格は約7000円、分配金は35円と下がりつつも、トータルのリターンは余裕でプラスとなりました。投資した元本の売却額はマイナスながら、その間に受け取った分配金の総額が元本のマイナス分を大きく上まわったからです。
しかし、そのまま現在も保有していたとすれば、筆者も喜んでばかりはいられなかったでしょう。保有期間中はつねに基準価格の動きをチェックして、解約のタイミングを見きわめることが重要だと実感させられました。

次のページグロソブ失速の第一の要因【為替変動の影響】

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