金融緩和政策解除に素直に踏み切れないECB 

2017.10.11

経営・マネジメント

金融緩和政策解除に素直に踏み切れないECB 

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今回は、欧州の経済見通しを考えたいと思います。2017年6月下旬に投稿した当レポートでは、ユーロ圏の経済は好調を維持しており、ECB(欧州中央銀行)はこれまで続けてきた資産購入縮小を早い時期に開始するのではとの見通しを示しました。 しかし、その見通しを少し修正しないといけないのではないかと思い始めました。

ドラギECB総裁は、6月27日ポルトガルで開催されたECBフォーラムの席で、デフレ圧力はリフレ(リフレーションとはデフレでもインフレでのなくその中間位置の物価圧力と解釈される。)に変わったとして、来年以降の資産購入縮小の示唆と市場は解釈しました。また、ECBは金融緩和策の調整については慎重になるべきとも語りました。

しかし翌日には、ECB当局者が過度に資産購入縮小を市場は期待しないように牽制を発しました。為替ではユーロ高が進む、市場がその方向に走ったことに対する牽制と言えます。ECBの金融政策の見通しに不透明感が漂う中で、8月下旬に開催された米国ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウムに注目が集まり、ドラギ総裁の講演が予定されており、市場が注視しました。

しかし、金融政策の見通しについて何ら今後の見通しについて発言がありませんでした。市場にはECBが資産購入縮小に踏み切る時期の先送りと、金利政策で金利を引き上げるにはまだまだ時間を要するのではないのかと思惑が広がりました。

そんな中、9月7日ECBは定例理事会を開催しました。
声明文では、金融政策について、政策金利:0.0%、預金金利:-0.40%、貸出金利:0.25%と据え置きを決定しました。6月8日の声明文では利下げを示唆するガイダンスは削除したことから、今後の政策金利の変更は利上げ以外にないと言えます。

そんな中での今回の定例理事会、また資産購入縮小(テーパリング)については秋に政策調整を決定すると発言しました。
そして極めて大規模な金融政策が必要とも語り、資産購入縮小には慎重姿勢を取りました。これは、6月27日のECBフォーラムと同様の表現とも言えると思います。
それでは、現状のユーロ圏経済、インフレ率をECBはどのように予想しているのでしょうか?今回、同時に発表されたECBのスタッフ予想では総じて経済見通し、インフレ見通し共に大きく上昇するとは見ていないようです。2017年GDP(域内総生産):2.2%(6月時点:1.9%)、2018年:1.8%(1.8%)、2019年:1.7%(1.7%)と今年がピークのような見通しとなっています。

またインフレ率予想では、2017年:1.5%(6月時点:1.5%)、2018年:1.2%(1.3%)、2019年:1.5%(1.6%)と、こちらも今年がピークのような見通しとなっています。ユーロ圏消費者物価指数の推移を見ると、今年は2月の2.0%が最も高い水準で、現在は1.5%前後で落ち着いています。為替がユーロ高に推移しており、これは物価圧力を押し下げています。

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