英国のEU離脱からわかった3つの気づき

画像: Norio NAKAYAMA

2016.06.30

経営・マネジメント

英国のEU離脱からわかった3つの気づき

野町 直弘
調達購買コンサルタント

先週末英国の国民投票でEU離脱派が過半を取りました。 我々はここから何を学ぶべきでしょうか?

他の手段とは生産要素価格(財や労働力など)の伸縮性があるかどうか、でありまた財政による所得分配も、その手段となりえます。あとは生産要素の移動性の高さです。
例えば日本の場合、東京も沖縄も同じ円を共通通貨として使っている訳ですが、地域によって所得額や生産性も異なるので、それを調整しているのが地域間の賃金等の格差であったり、財政の地方への交付金であったり。また今の日本が全くその世界になっています
が、所得が高い地域へ労働者が集まるとか、コストが安いところに資本を投下する(工場を地方に作る)などで同じ通貨を同じ価値で使うことを成り立たせています。
これが「最適通貨圏の理論」です。

EUの場合は財政機能がないので財政による所得再分配はできません。また価格の伸縮性についても賃金は下方硬直性がありますので、例えばギリシャはEU内でも生産性が低いから今以上に賃金を下げましょう、ということは難しくなります。そうすると生産要素の移動によって地域間の調整を行わないとなりません。

当初EU統合する際には特に製造業は労働コストが低い東欧に移転するだろうと言われていました。しかし蓋をあけてみると業種や国によって異なるものの業種の棲み分けは進んだものの、ドイツ、フランスなどの先進国側に工場は依然残っているようです。また2004年のEU拡大までは労働力移動、つまり移民ですが、これもそれほど進まなかったと言われています。当初の評価はそのようなものだったのです。

そこで英国(EU)は様々な積極的な移民受け入れ政策を行い、2004年のEU15カ国から25カ国への拡大が重なって流入する移民は意図を超えて急増していったのです。またこれは英国で当時政権を握っていた労働党政権の政策にもよるものでした。

移民は自国の労働力人口の増加につながります。その面では経済にプラスの効果をもたらします。しかし自国の所得につながる反面、元々の国民の仕事を奪うことにもつながります。
ですから移民に対する国民のイメージは必ずしもよくありません。
手元にISSPという期間が2013年におこなった調査がありますが、それによると英国では「移民に仕事が奪われているか」というアンケートに対して51.3%の方がそう思う、どちらといえばそう思う、と答えていることからも移民に対する印象が悪いことがわかるでしょう。

今回の英国のEU離脱の理由として移民問題があげられていることにはこういう背景があるのです。ここまで述べてEU統合の条件として労働力の移動性が上げられていた訳ですが、それが過ぎたために英国のEU離脱(決議)につながってしまったという皮肉な結果となっていることに気がつかれたことでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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