経営戦略構文100選(仮)/構文5:共通価値の戦略:CSV

2016.06.17

経営・マネジメント

経営戦略構文100選(仮)/構文5:共通価値の戦略:CSV

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。

リバースイノベーションとか、そうですよね。

空気清浄機は日本ではある程度、機能的に行き詰った感がありましたが、インドネシアでは、蚊が媒介する伝染病が社会問題です。だから、空気清浄機に蚊取り機能をつけ、すごく売れた。

これが今度、日本でも発売されるそうです。日本の発想の中にあるままだったら、出てこない商品でしょう。インドネシアの社会的ニーズがあればこそ、出てきた商品だとも言えるでしょう。

価値についてはここまでにしましょう。なんせ、バリューチェーンの話と、地域社会の話もしないといけませんからね。

ただね、上記の価値の話を見るに、ポーターのこれまでの考え方とさして変わってないと私は思うわけです。ポーターは元々、「収益性の高い業界において、ユニークな価値システム、特別に調整されたバリューチェーンを構築することで持続的競争優位を築け」と言っています。

そのためのユニークな価値がなかなか出ない状況の中で、社会的ニーズをきっかけに、ユニークな価値システムを構築すればいいというのは、「社会的」ということを利用しようと言っているに過ぎません。

それで、「価値システム」の説明をしていると日が暮れるので、今回は「価値」だけで我慢してください。ごめんなさい。いつか価値システムやフィットといった概念を真面目に解説します。

さて、ここからバリューチェーンの話と地域社会の話です。これらはまとめて書いてみます。これも真面目に解説していると日が暮れます。しかし、CSVという見てくれにするために、バリューチェーンの話と地域社会の話がポーターの文章では分けて書かれていますが、別に分ける必要もないと思います。

ポーターは市場外の影響の話、つまり外部性の話と、取引を介した話、つまり補完性の話をしています。市場外で影響を及ぼしあう対象とは、お互いに外部経済が働く状態に、外部不経済が最小化するような状態になるのがいいと言い、市場を介した取引においては、取引対象と補完性を最大化するのがいいと「共通価値の戦略」では言っているわけです。

外部性と補完性については経済学をやっていれば、基本中の基本ですのでわかるわけですが、知らない人もたくさんいると思いますので、説明を試みます。

まず外部性ですが、市場を介さずに企業は影響をいろいろな主体に与える可能性があります。いい影響を外部経済、悪い影響を外部不経済と言います。

わかりやすいのは、外部不経済ですね。いわゆる環境問題は外部不経済です。タバコの煙は外部不経済です。私はタバコの煙が大嫌いですが、路上でタバコを吸う人がいると、周囲の人はタバコを吸っている人と取引関係は全くないですが被害を被ります。新宿区は全域で路上喫煙禁止のはずなんですけどね・・・。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

フォロー フォローして伊藤 達夫の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。