なぜ買ってしまうのか?:トマトのお酒を分析する

2008.01.20

仕事術

なぜ買ってしまうのか?:トマトのお酒を分析する

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

つい買ってしまうモノ。やめられないモノ。誰にでもいくつかあるだろう。買ってしまう理由をちょっと考えると、「何となく」としか答えられないモノも多い。 そんな自分の中の「何となく」を解き明かしてスッキリしてみようと思った。 コンビニでいつも買ってしまうお酒の話。

両製品とも、生活者の健康志向に応える新しいアルコール飲料であることは、中核価値が同じであることがわかる。付随機能は考えられる範囲ではあまり重要な意味にはならないだろう。とすれば、勝負は同じ新しいトマトアルコール飲料というカテゴリーで、どれだけの差別化が図れているかということになる。

<実体>を比較してみると、アルコールらしくない方向にまとめた「トマーテ」と、よりアルコール飲料であることを強調している「トマトマ」の差異が明確だ。

■STPで両者の戦略を推測する

次に「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」、つまりSTPを考えてみよう。ちなみに、このあたりから、さらに筆者の想像の世界に突入していくので確度は保証の限りではない。

まず、ターゲティングは両商品とも30代の男女を想定しているらしい。この世代は「まぁ、まずビールでいいよな?」というと、「えー?」と切り替えされる、ビール離れが進んだ世代だといえるだろう。ビール離れ世代はビールのその苦みも好まないというので、こうしたトマト系飲料の爽やかな甘みはうってつけではないだろうか。また、ウイスキーなどの高アルコール度蒸留酒ではなく、ワインやカクテルを好む傾向もある。ということは、セグメントとして、ビール、ウィスキーなどを好むか否かという切り口も用いているのだろう。
もちろん、健康意識の高い人をターゲットにしているのは間違いない。日本人のトマト摂取量はここ10年で随分と上がっているという。品種改良によって甘みを増したことも大きく貢献しているだろうが、リコピンなど、トマトの持つ健康成分が支持されている。

ここまでは、「トマトマ」「トマーテ」両商品とも同一条件だが、製品特性と合わせて考えると、ポジショニングの違いが明らかになる。
製品特性の<実体>で、トマトマは「深い味わいを感じさせる唐辛子由来スパイスの隠し味/トマトと同じ成分のリコピンを使い、ロックで飲んだ際の氷に映える赤い色を強調」という特徴があった。ロックで飲むこと前提のちょっと高めのアルコール度数。そしてトマトに隠れたスパイスが味の深みを演出する。健康だけでなく、ちょっとオシャレな大人のカクテルというポジションを目指しているのだろう。
一方、トマーテは「味が濃く香りが強い非加熱濃縮のトマト果汁を使用/そのままゴクゴク飲めるトマトジュースのようなサラサラとした飲み口」はっきり言って、あまりアルコールらしくない特徴だ。お酒というよりは、ちょっとアルコールが入った健康的な飲み物というポジションではないだろうか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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