バーチャルヒューマンの人間化

2008.01.19

組織・人材

バーチャルヒューマンの人間化

横井 真人
産業能率大学 教授

イラクに派遣される米軍将兵の異文化対応力向上プログラムには感情を兼ね備えたよりリアルなバーチャルヒューマンが活躍しています。

昨年末、シミュレーションの最先端を調査しに、シカゴ、トロント、サンフランシスコ、ロサンゼルスの大学を訪問してきました。シカゴ・トロントでは吹雪に遭遇し、飛行機に乗り遅れ、散々な目にあった後に訪れたカリフォルニアは天国に思えました。訪問先の大半は心理学系の研究者だったのですが、最後に訪れた拠点では人工知能分野の研究者と面談ができました。

その研究者が属する研究機関はハリウッド資本との合弁機関で、国防省からの研究開発委託を受けています。そしてそのメインの仕事とは、イラクに派遣させる米軍将兵の異文化対応力向上のためのプログラム開発だったのです。周知の通り、イラクではすでに2008年1月現在、4000人のアメリカ人将兵が命を落としており、今後その数は伸び続けることでしょう。同時に無事本国へ帰還した将兵もPSTDで苦しんだりしています。

米国防省ではこのような状況に対し、将兵への心のケア、そして感情面での能力向上に多大な予算をつける判断をしました。その一側面として、派遣前の将兵にイラクの実情をどれだけ理解させ、問題意識を持たせつつ、サバイバル能力をつけさせるかを追求しているのがこのプロジェクトです。

一般人でも一方的な講義や座学では勉強意欲が萎えます。ましてや生死に関わる大きな要素であるイラク現地の人々との適切で効果的な交流方法は講義では教えられません。そこで登場したのが、ITと動画を駆使した状況シミュレーションです。

デモを見せてもらいましたが、イラク郡部のある部族長が屋敷で出迎える場面から始まります。訪問の目的はこの地域にある診療施設の移設に賛同してもらうことです。ここで現地の礼に則った挨拶ができないと相手の感情を害するというストーリーとなります。こちらの発言に合わせ、バーチャルヒューマンが返答(ジェスチャー交え)するというかなりリアルなやりとりが再現されます。こちらの対応によって腹を立てて席をたったり、提案に賛同して乾杯をしたりもします。途中でゲリラの流れ弾に被弾するという設定にすると、お互い動揺している状況を、どうこちら側に有利に交渉に使うかというポイントを学んだりもできます。ハリウッドがからんでいるのはこのようにリアルなバーチャルキャラクターのレンダリングやアニメーション技術、また精緻な脚本が必要だからです。

仕組み上は感情の種類に合わせた表情や声音、ノンバーバルなボディーランゲージなども様々な人種・カルチャー毎にデータベース上に登録されており、登場キャラクターの設定に応じ、表出できるようになっています。マルチパーティー・インタラクションと呼ばれる複数の登場人物の間でのやりとりができるようになったのも最新のテクノロジーのおかげらしいです。

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横井 真人

横井 真人

産業能率大学 教授

個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。

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